医療コラム

「新型コロナ禍での診療⑩」

今回の仮想患者様Iさんは85歳の女性の方で、約10年前に脳梗塞を発症し、その後脳血管性認知症も認められるようになり、グループホームに入所されていました。1か月に1回程度、脳神経外科に定期的に外来通院していましたが、約1年前から通院が困難となり、同院より当院に入居施設への訪問診療で治療継続の依頼がありました。そのためご家族に来院頂き、新型コロナ禍であることから、北見市内の入院医療がひっ迫していたら急変しても入院できない可能性があるため、基本的には急変時には入居施設で対応し、それで残念ながら改善しない場合には施設での看取りとさせて頂きたい旨を説明。また訪問診療でかかる費用や、状態が悪くなった際には訪問看護を導入させて頂くことなども説明。その方針でご家族から了承頂き、数日後より入居施設への訪問診療を開始。その後飲み込む力がやや低下していたため、何度か軽い誤嚥性肺炎を起こしましたが、抗生剤の内服などにて対応し大きな変化はありませんでした。約2か月前には北見市内の各施設で新型コロナワクチンの巡回接種も行われ、Iさんも新型コロナワクチンを2回接種しましたが、強い副反応などは認めませんでした。そうした矢先、数日前からIさんが熱はないが、少し呼吸が苦しくてだるいと言って食事があまり摂れないとのことで、入居施設の看護師より連絡があり。ワクチン接種を終了しているため、もし新型コロナに感染していても熱が出ない状態で、呼吸が苦しくなったり、全身倦怠感が出ている可能性があると判断。そのため新型コロナの抗原検査を念のため施設で実施することとし、入居施設にN95マスクとフェイスガード、ガウン、キャップ、グローブを装着の上、往診を実施。Iさんに検査を実施しましたが、結果は陰性でした。酸素濃度も測定し低下がみられなかったことから、経過観察することとしました。 新型コロナワクチンを接種すると、感染予防効果や重症化を防ぐ効果があると言われています。しかしワクチン接種後に新型コロナに感染すると、特に高齢者ではあまり熱は出ず、倦怠感や呼吸苦の症状のみの可能性もあります。そのためもし次の流行が来た際には、ワクチン接種後の高齢者の方の場合、そのことも頭に入れて対応が必要と思われます。

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