医療コラム

「新型コロナ禍での診療⑪」

今回の仮想患者様Jさんは80歳の女性の方で、約10年前にアルツハイマー型認知症と診断され、外来通院で治療を受けてきました。しかしここ数年で認知症が進行し、数か月前からは食事や水分を飲み込む力が弱くなり、食べたものや飲んだものの一部が気管に入って起こる誤嚥性肺炎で入退院を繰り返すようになっていました。今回も誤嚥性肺炎で入院していましたが、入院が長期になったこともあり寝たきり状態となってしまい、さらには食事を飲み込むことがほとんどできなくなり、点滴での栄養と水分補給がないと延命できない状態となってしまいました。コロナ禍で面会が全くできていなかったため、夫が入院中の病院から病状説明を受けるため、久しぶりにJさんに会うことができましたが、だいぶ痩せてしまっている状態でした。主治医より誤嚥性肺炎は良くなったが、食事が摂れない状態であり、今後療養型の病院に転院して療養を続けるか、自宅での看取りも含め訪問診療や訪問看護を受けながら自宅療養を行うかの選択を夫に相談されました。夫はJさんが認知症になる前に、延命治療は希望せず、もし何も治療できない状態になった際には、最期を自宅で迎えたいと言っていたこと、コロナ禍だと転院先でも面会がほとんどできないことから、自宅への退院を選択されました。そのため入院中の病院より、退院後自宅への訪問診療の依頼があり、入院中の病院でJさんの夫と面談。夫との話し合いの結果、延命治療を希望されていないため自宅では点滴は行わないこと、もしまた肺炎になっても入院はせずに自宅で治療できる範囲で治療すること、肺炎や老衰で亡くなった際には自宅で看取ることなどの方針を決定し、訪問診療の費用なども説明の上、数日後自宅退院となりました。 退院後はお子さんがいらっしゃらないため、ご主人が介護を頑張りJさんの自宅療養を行っていました。退院後約1週間が経った頃、ご主人が持病の腰痛がひどくなり動けなくなってしまったと訪問看護師から連絡があり、急遽自宅に伺いご主人に相談したところ、残念ながら夫はこれ以上介護することはできず、手伝ってもらえる家族もいないため、今後療養型の病院への入院を希望。療養型への病院の空きがないため、前医の入院していた病院に状況を説明し、Jさんの入院依頼を行い救急車にて搬送し再入院。約1か月後に療養型の病院へ転院となったとのことでした。

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