医療コラム

脂質異常症について

 脂質異常症とは、かつては高脂血症と呼ばれていた疾患です。現在では、トリグリセライド(TG)といわゆる善玉コレステロールのHDLコレステロール(HDL–C)、いわゆる悪玉コレステロールのLDLコレステロール(LDL–C)の3つを採血検査で測定し、食事・運動療法や薬物治療を行います。治療が必要な脂質異常症を治療せず放置しておくと、動脈硬化という動脈が固くなったり狭くなったりすることにより、脳梗塞や心筋梗塞などの直接命に関わり後遺症も残りやすい疾患の原因となります。また特にTGがとても高い方では、急性膵炎という急に強い腹痛や背部痛を起こし、重症になると命に関わり後遺症も残ることがある疾患の原因にもなりますので、治療が必要となります。この脂質異常症のこわいところは、全く症状がないにもかかわらず、症状が出た時には心筋梗塞や脳梗塞、急性膵炎などの重症な疾患として発症するため、治療が必要といわれているのにも関わらず放置することはとても危険です。さらに脂質異常症の他に高血圧や糖尿病、慢性腎臓病も指摘されている方は、さらに脳梗塞や心筋梗塞になりやすいため注意が必要です。
健診や病院の採血検査結果で脂質異常症といわれた方は、まず必ずすべきことは、食事療法・運動療法を中心とした生活習慣の改善です。食事療法では、3食をきちんと規則的に食べて、肉の脂身や乳製品、卵、揚げ物、甘い物、菓子類、アルコール摂取を控え、野菜を多く含めたバランスの良い日本食を心掛けてください。また運動療法では、ウォーキングや水泳、エアロビクス、サイクリング、筋肉トレーニングなどの有酸素運動(酸素を十分に取り込んでうっすら汗をかく程度の運動)を、1日の合計30分以上をできれば毎日、少なくとも週3回行うことが望ましいとされています。さらに禁煙と受動喫煙の防止は必須です。これらの食事療法・運動療法を実践して3~6か月後に十分な改善がみられないようであれば、病院での薬物治療をお勧めします。高血圧のコラムにも書きましたが、よく患者さんから「薬は一度飲み始めたらやめられないの?」と質問されます。それに対して私は次のように答えています。「薬を飲み始めてからも、毎日食事療法と運動療法、禁煙などをしっかり続けて、採血でコレステロールなどの値が下がりすぎてしまったら中止することはあります。しかしそのように努力される方は、100人に1人もいないかな。」
脂質異常症も高血圧と同様に万病の元ですので、自覚症状がないからといって軽視せずに、予防や治療を行いましょう!

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