医療コラム

「新型コロナ禍での診療⑨」

今回の仮想患者様Hさんは65歳の男性の方で、約1年前に肺癌と診断され、抗癌剤治療を他院で続けてきました。しかし治療効果が乏しく、副作用により食事もあまりとれなくなり、通院も困難となりました。そのため主治医との話し合いの結果、これ以上抗癌剤治療などの積極的な治療は行わず、今後は苦痛を和らげる緩和治療を行っていく方針としました。Hさんは新型コロナのワクチンは2回接種したものの、通院などで新型コロナに感染するのが心配であり、通院する体力もないとのことで在宅緩和治療を希望。そのため主治医から当院に、自宅への訪問診療による在宅緩和治療の依頼があり。数日後、Hさんとご家族に一度当院に来て頂き、訪問診療の費用の説明や最期をどこで迎えるかの希望を確認。またもし何らかの理由で入院を希望されたとしても、北見市で新型コロナ感染者が急増した状況になっていると、入院を速やかに受け入れてもらえない可能性があることを説明。Hさんとご家族は、基本的には自宅で最期まで過ごしたいとのことでした。そのためその数日後より、自宅への訪問診療を開始。肺癌による痛みに対してはモルヒネ製剤、倦怠感に対してはステロイドホルモン、微熱や骨転移による痛みに対して解熱鎮痛剤をそれぞれ開始。それらの治療を実施後、それぞれの苦痛であった症状は軽減し、ご自宅で趣味の家庭菜園などもしながら過ごされていました。その後たまに呼吸が苦しくなることがあるとのことで、頓服のモルヒネも処方し経過観察をしていました。ある日の夜、熱はないものの、急に咳が出て呼吸が苦しくなってきたため、頓服のモルヒネを使用したが、いつものようにあまり症状が改善しないとのことで、ご家族より往診の依頼があり。往診前に電話で、最近北見市外の方が家に来られたり、家で家族以外の方と飲食をしたりしていないかを尋ねたところ、5日前に本州から兄が自宅に見舞いに来て、飲食を共にしたとのこと。そのためもし新型コロナに感染していたとしても、解熱鎮痛剤などの使用と2回のワクチン接種後のため、症状が軽く出ている可能性があり。念のため新型コロナの抗原検査を実施するため、N95マスクとフェイスガード、ガウン、キャップ、グローブを装着の上、往診を実施。検査の結果幸いにも陰性であったため、咳止めやモルヒネを増量し経過観察としました。 このような対応が今後も訪問診療においては必要になってくると思われます。大都市圏のように、新型コロナに感染しても入院や療養ホテルに入れない方に対し、自宅への往診を行わなければならない事態に北見市がならないことを祈るばかりです。

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