今回の仮想患者様mさんは81歳の女性の方です。約半年前から背部の違和感とたまに血尿が見られていましたが、恐らく膀胱炎だろうと考え、市販の膀胱炎の薬をたまに飲みながら様子を見ていました。約2週間前から38度を超える発熱と背部の痛みが出現したため、近医を受診。近医の検査で精密検査が必要と判断され、後日総合病院の泌尿器科に紹介。精密検査の結果、進行尿管癌の診断となりました。手術も検討されましたが、高齢であることやご本人が積極的な治療を希望されなかったことなどから、当院での訪問診療による在宅緩和治療を勧められ、紹介状をお持ちになり後日当院外来にご家族と初診となりました。ご本人とご家族に対し、在宅医療で対応可能なことや不可能なこと、市内の訪問看護ステーションとも契約して頂き緊急時には24時間対応すること、1か月の診療費などを説明。またご本人とご家族に最期をどこで迎えたいか、迎えさせたいか、ご本人が残された時間にやりたいことや、御希望が何かあるかなどを伺いました。ご本人からは、痛みなどの苦痛は極力とって楽な状態で最期を迎えたいという希望があり、ご家族からはできれば最期は自宅で迎えさせてあげたいが、療養中介護が困難な状態となった際には、入院での対応も希望するかもしれないということでした。なるべくそれらの御希望に添えるよう努力する旨お伝えし、後日自宅への訪問診療を開始。訪問診療開始時より、ご本 人の苦痛をなるべくとるため、痛みや発熱を和らげる解熱鎮痛剤の定期内服を胃薬と併せて開始。その後便秘に対し下剤や、不眠に対して睡眠薬なども処方。それらの内服にて約1か月間は、ご自宅でお元気に療養されていました。その後、背中の痛みが強くなってきたため、ご本人にモルヒネ製剤の副作用などを説明し、その副作用を起こしにくくする予防薬も併せて処方するので心配ない旨を説明の上、モルヒネ製剤の処方を開始。その後背部痛などの痛みもだいぶ緩和され、自宅療養を継続。モルヒネも症状を伺いながら必要時に増量し、それほど苦痛は感じられないということでしたが、次第に病状の悪化と共に食事の摂取量が低下し、体重も落ち寝たきり状態となりました。しかしご本人もそれほど苦痛はないため、このまま自宅で最期を迎えたいと希望され、ご家族もこの状態であれば介護はできそうだということで、引き続き在宅緩和治療を継続。最期は穏やかにご家族に見守られながら、自宅で永眠されました。