今回の仮想患者様Cさんは、85歳女性の方で、80歳の時に大腿骨を骨折し整形外科で手術を受けるも、その後のリハビリがうまく進まず寝たきり状態となり、自宅で家族の介護を受けながら療養中でした。1年くらい前から元気がなくなると共に、食欲の低下も見られるようになってきました。半年くらい前からは、手足を中心にむくみが段々強くなり、手足も動かせなくなってきたとのことで訪問診療の依頼があり、数日後訪問診療を実施。 このようなケースでまず考えるのは、心不全や腎不全です。心不全があると、全身からの血液がうまく戻れないため、全身にむくみが出ます。また腎不全になっていると、身体の水分が尿としてうまく外に出せないことで、全身にむくみが出ます。次に心不全や腎不全ではない時に考える病気は、低栄養状態によるものや進行癌によるものを考えます。低栄養状態になると、血の中のたんぱく質が少なくなり、血管の中に水分が留まることができなくなります。そのため血管の外に水分が出てしまい、それがむくみの原因となります。また身体のどこかに進行癌があると、食欲がなくなったり、癌に栄養や血液を横取りされるため、低栄養状態と貧血が進行します。それらが全身のむくみの原因になります。 むくみの対応方法としては、まずは採血検査などである程度の原因を調 べ、それ程ひどくない下肢のむくみの場合には、寝る時に座布団1〜2枚くらいの高さで下肢を高くすれば、朝には改善がみられることが多いです。ひどいむくみの場合には、脱水や腎機能の悪化に注意しながら利尿剤を使います。これは腎臓で血管内の水分を尿として外に出すのを促し、むくみとして血管の外に出てしまった水分を、再び血管内に引き戻すことでむくみを改善させる方法です。これらの対応を行いながら、さらに栄養状態の悪い場合には、栄養剤を飲んで頂くこともあります。軽度から中等度のむくみであれば、様子を見てもよい場合が多いですが、高度のむくみの場合には、皮膚が破れてそこから水分が外に出てしまったり、破れてしまったところから菌が入り込んで、感染症を引き起こすことがあります。その為ひどいむくみの場合には、皮膚が破れる前にある程度むくみを改善させる必要があると思われます。