今回の仮想患者様Bさんは、75歳男性の方で、これまで特に大きな病気をしたことはないものの、若いころから毎日20本くらいタバコを吸って生活をされてきました。60歳くらいから咳や痰が多くなり、坂道をのぼったり長く歩くと息切れがするようになりました。65歳頃からは自宅でトイレに行くだけでも息切れがして、風呂に入るとすごく体が疲れるため、風呂に入る回数も減ってきました。70歳になる頃にはトイレに行くのがつらくなり、ベッドの横でトイレをするようになりました。風呂もほとんど入らなくなり、家族に体を拭いてもらう程度となりました。75歳になり、最近では食欲がなく食事量が減り、一日中ベッドの上で過ごすようになり、ほとんど家の中も歩くことはなくなりました。その為か、足の筋肉はかなり落ち、体重もかなり減って全身がかなりやせた状態となってしまいました。その為御家族から、食事が食べられなくなったので受診したいが、病院に連れていくのも難しいとのことで訪問診療の依頼があり、数日後訪問診療を開始。御自宅で採血検査や診察を行ったところ、慢性閉塞性肺疾患の診断となりました。これは喫煙などにより肺の組織が破壊され、さらに気道の慢性的な炎症を伴うことで酸素の取り込みや二酸化炭素の排出がうまくいかなくなる疾患です。この病気は進行性に肺が破壊され、一度破壊された肺は治すことはできません。そのためこの患者様に行う治療としては、まず禁煙をした上で、気管支を広げる吸入薬や内服薬、気道の炎症を抑える吸入薬、痰を柔らかくして出しやすくする内服薬、そして在宅酸素療法です。在宅酸素療法とは、機械を使って空気から濃縮した酸素をつくり出し、それを鼻や口から吸い続けるという酸素不足を解消する治療です。さらにこの方に行うべきことは、下肢の筋力トレーニングです。しばらく酸素不足で動けずベッド上の生活であったため、足もかなり細くなってしまうことが多く、通院でのリハビリは難しいため、このようなケースでは、理学療法士さんが自宅にきてリハビリをしてくれる、訪問リハビリテーションを依頼することとなります。さらに必要時には、胃薬の投与や下剤による排便コントロールを行うことで、食欲の改善もみられることがあります。しかしこのようなケースの患者様は、肺炎を合併し繰り返すことが多く、その後肺炎との戦いになることが多いです。