医療コラム

介護医療コラム(7)「老衰と在宅医療」

老衰とは年齢が高齢となり、生きていく中で必要な様々な機能が低下してくる状態をいいます。具体的に低下してくる能力として挙げられるのは、①水分や食べ物をのみ込む力、②全身の筋力、③胃腸の動きや消化をする能力などです。①が低下すると、食事にかかる時間が長くなる、食事中に食べ物の一部が気管に入ることでむせる、さらに低下すると肺炎を繰り返したり、食事や水分がのみ込めなくなるなどの症状がみられるようになります。②が低下すると、歩くことから困難となり始め、やがて寝たきり状態となり、さらに低下すると、寝返りもできなくなり褥瘡(床ずれ)ができる原因となります。③が低下すると、下痢や便秘、おなかが張る、食欲の低下などの症状がみられるようになります。これら①〜③の能力が低下することにより、血中のたんぱく質の濃度が低下するため、心臓や腎臓がそれほど悪くないにもかかわらず、全身のむくみが出てくるようになります。 当院で在宅医療を依頼される老衰患者様の多くは、高齢だがこれまで大きな病気もされずずっとお元気であったが、急に食事がとれなくなってきたというような患者様です。よく御家族より食事がとれないので点滴をしてほしいと依頼されるのですが、老衰の患者様に点滴を行うと、血中のたんぱく質の濃度が低下しているため、血管の中に入れた点滴の水分が血管の中に留まっていられず、むくみや胸水・腹水などになってしまうことで、余計に具合が悪くなることがあります。そのため当院では老衰の患者様に対しては極力点滴を行わず、胃腸の動きや消化吸収、便秘などを改善させる内服薬を投与の上、口から摂れる栄養剤を処方します。しかしそれでも改善が見られない場合には、御家族と相談の上、口から摂れる水分と栄養のみで経過をみていき、それらが摂れなくなり最終的には栄養失調のような状態で自宅や入所施設で看取らせて頂いております。老衰は病気ではないため、現在の医療制度では基本的には入院の適応はありません。しかしながら定期的に通院している病院がなく、急に老衰で亡くなられてしまった場合には、事件性を否定するため検視という警察の介入が必要となるため注意が必要です。積極的な治療は希望されず、最期まで自宅で過ごしたいという御希望の患者様に対しては、可能な限り対応させて頂きたいと考えておりますので、ご相談頂ければと思います。

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