認知症の人は年々増加しており、高齢になるほど認知症の人の割合は高くなります。ある報告によると、80歳以上では約7人に1人、85歳以上では約4人に1人が認知症であるといわれています。認知症の的確な診断や治療は、専門の脳神経外科や精神科の医師にお任せすることとして、当院の在宅医療で主に対応させて頂いている認知症の患者様は、①認知症により通院を拒否されている患者様、②認知症の進行に伴い食事がとれなくなったり肺炎を繰り返すような不安定な患者様、③いわゆる認知症の末期の患者様、などのある程度進行してしまった方々です。①の患者様に対しては、通院を拒否されているため、家や施設に訪問診療を行い、認知症の進行を遅くする内服薬や内科疾患の内服薬、そして必要時には興奮を抑えたり夜眠れるようにする内服薬などを処方し、定期的に経過をみていきます。②の患者様に対しては、食事がとれない原因を調べつつ、食事から十分カロリー摂取ができない方には栄養剤の処方なども行っています。また認知症が進行すると、だんだん寝たきり状態となり、さらには嚥下機能という物を飲み込む能力も低下します。その為食べた食事の一部が気管に入ったり、唾液がうまく飲み込めず気管に入り込んだりすることで、誤嚥性肺炎という肺炎を繰り返すこととなります。これを繰り返すと、昼夜問わず頻回に発熱や痰がらみを繰り返すため、抗生物質の投与や必要時には痰の吸引なども必要となってきます。③の患者様とは、アルツハイマー型認知症のような進行性の認知症により、脳全体の萎縮が著明となり、脳の機能が著しく低下している方です。具体的には、寝たきり状態でなおかつ意思の疎通もとれず、嚥下機能の低下により経口摂取や内服もほぼ不能となっているような状況となります。残念ながら現在の医学ではこれらの状態の改善は難しく、自宅での最期を御希望される患者様のご家族に対し、点滴等は行わず自然の経過で看取らせて頂くケースが増えています。 認知症はがんと同様に進行性の病気ですので、早期発見と早期治療が重要な疾患です。しかし現在の医学では進行を遅らせることはできても治すことができないため、どうしても進行した後に老衰のような状態になってしまいます。その際に施設や自宅での看取りを希望される患者様のご家族がいらっしゃいましたら、主治医とご相談の上、当院にご相談頂けたらと思います。