医療コラム

「新型コロナ禍での診療⑥」

今回の仮想患者様Eさんは80歳の女性の方で、元々アルツハイマー型認知症があり、独居での生活が困難となり、約5年前から認知症型グループホームに入所されていました。市内に息子さん夫婦がいて、新型コロナ禍となるまでは、月に1度程度週末に息子さん夫婦の家に外泊され、リフレッシュされていました。またグループホームでも色々な行事で外出したり、他の入所者とのレクレーションなどもあり、比較的穏やかに生活できていました。しかし新型コロナ禍となり、もし施設内にウイルスが持ち込まれて、入所者や介護職員に感染が広がり、クラスターとなると大変なことになるため、施設では外出や外泊、ご家族との面会、他の入所者とのレクレーションを一切禁止としました。また介護職員も、従来の介護業務に加えて1日数回入所者の検温を行う業務や、施設内のあらゆるところを頻回にアルコール消毒する業務などが増えて、各入所者と接する時間も減少しました。そのためEさんは自室で横になっていることが多くなり、下肢の筋力が低下し車椅子生活となってしまいました。また外出や他の入所者と会話する機会も減ってしまい、認知症の悪化と共にイライラすることが増えてきました。ある日、他の入所者に怒鳴るような行為もみられるようになり、他の入所者がノイローゼになってしまいました。そのためEさんのご家族に状況を説明した上で、普段から訪問診療をしていた当院に施設側から相談があり、訪問診療を実施。診察上、認知症の悪化と共にイライラする様子が多くみられ、日中寝ていることが多いため夜間あまり眠れなくなっているとのこと。そのため日中はなるべく声掛けなどして眠らないようにして、夜間しっかり眠れるように睡眠薬を処方。またそれまで処方していたアルツハイマー型認知症に対する内服薬も、イライラを抑えるようなタイプのものに変更し経過観察。約1か月後にはイライラや他の入所者への暴言なども改善されていました。 新型コロナ禍が続いている今、特に認知症がある高齢者の方は以上のような理由で、日常生活に刺激が少なくなり、認知症の悪化や老衰の進行が散見されます。内服薬などでの対応は一時しのぎでしかないため、一日も早く新型コロナウイルスの流行が収まり、流行前のようにご家族との面会や外出・外泊、様々なレクレーションなどの再開などにより、ストレスの少ない生活をまた送って頂きたいと思います。

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