医療コラム

「新型コロナ禍での診療⑦」

今回の仮想患者様Fさんは95歳の女性の方で、約3年前から通院が困難となり、当院に訪問診療の依頼があり。その後ご自宅に訪問診療を定期的に行っておりました。元々老衰状態であり、食事量も徐々に少なくなり、最近では飲み込む力も弱くなったため、水分をとるのも厳しい状態となりました。飲み込みやすくするため、食事や水分にとろみをつける工夫なども行いましたが、むせてしまうことも増えてきました。そのため余命としてはあと1~2週間程度だろうという説明をご家族に行い、話し合いの結果、このままご自宅で看取る方針となりました。その後も訪問診療と訪問看護にて経過観察をしていたところ、訪問看護師から、Fさんに発熱と咳が見られるようになったとのことで往診の依頼があり、急遽実施。その際にFさんとしばらく会えていなかった息子さんが、Fさんがあまり長くはないという状況であることを他の家族から聞いて、数日前からご自宅に来られていました。Fさんは聴診上、肺に雑音も聴取されたため肺炎を疑いました。新型コロナ禍であるため、念のためご家族に風邪症状等がないか伺ったところ、関西から来た息子さんが微熱と風邪症状があるとのこと。そのため万が一、Fさんと息子さんが新型コロナ感染症であると、訪問診療を行っている医師や看護師、他のご家族に感染してしまう可能性が高いため、発熱が見られる2人に念のため新型コロナウイルスの抗原検査を行うことを提案。息子さんと他のご家族も了承され、ご自宅で検査を実施。幸い息子さんもFさんも抗原検査は陰性であったため、ご自宅でFさんの診療を継続することとしました。Fさんの肺炎に対しては、抗生剤と解熱剤の内服薬にて治療を行いましたが改善が見られず、約1週間後ご自宅でご家族に見守られながら永眠されました。 新型コロナ禍となり、施設入所や入院中であると大勢のご家族で患者さんの臨終に立ち会えないことが多くなり、ご自宅での看取りをご希望され訪問診療を依頼されるケースが増えてきています。令和3年7月から北見市においても、新型コロナウイルス感染者が急増していること、新型コロナウイルスの変異型である感染力の強いデルタ株が北海道においても増えてきていることなどから、今後ご自宅での訪問診療や訪問看護に携わる医療従事者や介護をされるご家族、患者様が、外部からご自宅に人の出入りが多い場合、感染リスクが増えることも考慮しながら、在宅医療を行う必要があると思われます。

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