医療コラム

「新型コロナ渦での診療⑤」

今回の仮想患者様Dさんは85歳の女性の方で、ご主人を約10年前に亡くされて、息子さんと娘さんが1人ずついるものの、どちらの方も本州に住んでいるため、しばらく自宅で一人暮らしをしていました。しかし80歳を過ぎた頃から足腰が弱くなり、自分で食事を作ることや風呂に入ることなどが困難となったため、約4年前に有料老人ホームに入所。その後しばらくは、当院外来通院で持病の狭心症や慢性心不全などの治療を続けておりました。約2年前から徐々に心臓の機能が低下してきて車椅子生活となり、外来通院も困難となってきたため、入居施設への訪問診療に切り替え、内服治療を継続しておりました。その頃には、本州の息子さんや娘さんも定期的に入居施設を訪れ、ご本人の病状などもその際に説明を受けていました。しかしその後新型コロナ禍となり、本州からなかなか息子さんと娘さんが来ることができなくなっていました。約1か月前から、心不全や狭心症の悪化の兆候がみられるようになり、本人に大きな病院での精密検査や治療を勧めるも、もう年だから入院や検査はしたくないとお話しされていました。そのため息子さんに、もしかすると今後心不全悪化や心筋梗塞となり、命にかかわることになるかもしれないと電話で連絡。息子さんからも、Dさんに電話で大きな病院での精密検査など勧めるも、同様の理由で断っておりました。そのため非常事態宣言などが解除されたら、息子さんがすぐにこちらに来て本人を説得するという話をされていました。息子さんには万一Dさんが急変されて、救急搬送もできない状態になった際には、施設での看取りの可能性もあると説明し、その際はやむを得ないと了承されていました。その約1週間後、施設の職員が朝本人の部屋に行ったところ、心肺停止状態になっているDさんを発見。当院に往診の依頼があり、急遽往診実施。往診時には死後硬直もみられ、心肺蘇生を行っても厳しいと判断。そのため入居施設で死亡確認を行い、息子さんに電話で急変されて亡くなった旨を説明。翌日には息子さん娘さんが来られて、亡くなられたDさんに対面されたとのことでした。新型コロナ禍となり、特に札幌や東京、大阪などの感染流行地域にご家族がいる際には、施設への面会などが難しい状態となっており、急な病状の変化などにすぐ対応できないケースが増えてきています。そのため急変時の対応などを、普段から施設側と話し合っておく必要があると思われます。

お問合せ

〒090-0065 北海道北見市寿町5丁目1-10

0157-26-6471

発熱などの症状のある方は、来院される前に必ずご連絡をお願いいたします。