今回の患者様⑬さんは90歳男性の方で、兄弟はおらず奥様は亡くなり、お子さんもいないため親族が1人もいないという方です。親が資産家だったようで、大きな家に一人暮らしをされていて、貯金もかなりな額があるということです。その地区の民生委員の方が以前からその方を心配され、定期的に訪問していました。最近足腰が弱り家の中でも歩くことができなくなり、床を這いながら移動されているとのことでした。そのためその民生委員から包括支援センターに支援の依頼があり、民生委員と包括支援センター職員で自宅に訪問。どの医療機関にも通院しておらず、下肢に無数の傷があり、腰辺りに褥瘡もできているため、近くの診療所に受診するよう促しましたが拒否。放っておくわけにもいかないため、本人の了承を得て当院に訪問診療の打診があり。数日後自宅へ訪問診療開始。診察し採血検査も実施したところ、認知症と高血圧、腎機能の低下、腰部の褥瘡、下肢の傷などに対して治療が必要と判断。本人の承諾もあり、訪問診療と訪問看護で治療していくこととしました。その後定期的に訪問診療と訪問看護をしていたところ、知らない人が何人も自宅に出入りしていることがわかり、それらの人に関係を尋ねたところ、遠い親戚だとのこと。包括支援センターに親戚がいるか調べてもらったところ、親戚はいないはずだとのこと。ご本人にその方達とどのように 接しているのかを聞いたところ、金銭感覚がわからないようで、何か食 べ物をもってきてくれたら、その都度1万円札を渡しているとのこと。また家にある骨董品も最近なくなってきているとのこと。状況的にお金や物を取られている可能性が高いと判断。警察にも相談するも、お金を自ら渡していること、認知症もあり何がなくなっているのかはっきり言えないため、立件することは難しいとのこと。そのため自宅にいると犯罪に巻き込まれている可能性が高いため、ご本人を説得し、セキュリティーがしっかりした有料老人ホームに入所してもらい、自称親戚の人に会わせないように対応。弁護士に後見人となってもらい、財産管理も行ってもらいました。それぞれ調子が悪かったところも治療で安定したため、たまにご自宅に有料老人ホームの職員と一緒に物を取りに行ったりすることもできるようになりました。今後も基本的には有料老人ホームで生活して頂くこととし、訪問診療と訪問看護も継続としました。