医療コラム

介護医療コラム(73)「訪問診療継続困難ケース⑧」

今回の患者様⑧さんは92歳男性の方で、以前から老人入居施設に入所されていました。アルツハイマー型認知症と老衰状態のため通院が次第に困難となり、通院していた病院の主治医とご家族が当院訪問診療での対応を希望され、ご家族が紹介状をお持ちになり、当院外来に初診となりました。外来でご家族は、⑧さんは高齢で食事も摂れなくなってきているが、点滴などの延命治療は希望せず、内服治療でできる範囲の、本人の負担とならない程度での対応を希望され、最期は入居施設での看取りを希望されました。その方針で今後訪問診療を行うこととし、訪問看護も導入の上、数日後入居施設への訪問診療を開始。訪問診療開始時には少しずつ食事は摂れていたものの、内服薬が多すぎてなかなか飲めないとのことで、優先順位をつけて最低限の内服薬としました。その後軽い誤嚥性肺炎を何度か繰り返すも、抗生剤の内服などにてその都度何とか改善。食事量もさらに少なくなってきたため、栄養剤の処方なども行い経過観察。訪問診療開始約半年後には、⑧さんはベッド上に寝たきり状態となり、食事や栄養剤の摂取もさらに少なくなっていきました。そのためご家族に今後急変の可能性がある旨説明し、当初のご希望通り、急変時には施設での看取りの方向で良いかを入居施設で話し合っていたところ、突然施設側から、ここの施設では寝たきり状態のような高度な介護状態になった方や、重症な方は退所して頂き、看取りの対応はできませんと言われました。すでにもう他の施設を探すような時間的な余裕もなく、施設側に看取りを行ってもいつも診ている訪問診療医が看取りを行うため法律的にも問題なく、死後処置も訪問看護が行うため施設側には迷惑はかけない、何より住み慣れたところで⑧さんとご家族は最期を迎えたいのではないかと色々協議をしました。しかし入居施設側は方針を曲げないため、やむを得ずご家族と今後のことについて相談。療養病床がある病院へ事情を説明の上入院の依頼を行い、数日後、入居施設から救急搬送を行って療養病床の病院へ入院となりました。その後ご家族から、入院約1週間後に永眠されたとのことでした。

column2004

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