今回の患者様③さんは83歳の女性の方で、77歳の時に幻覚などの症状を伴う進行性の認知症であるレビー小体型認知症と診断され、定期的に精神科での通院加療を受けていました。元々の性格は非常に神経質で、心配性の方とのことでした。これまで娘さんの介助で、1か月に1回の精神科の外来通院は可能でしたが、1か月前から急に腰の痛みと下肢の筋力低下が強くなりました。そのため歩行や車椅子に乗ることも難しくなり、精神科の担当医にご家族が相談。精神科の担当医より、当院に訪問診療による認知症の内服薬継続処方、および腰痛に対する治療の依頼があり。数日後からご自宅への訪問診療を開始。同時に看護と介護、リハビリが必要であるため、訪問看護と訪問介護、訪問リハビリも導入。精神科からの内服薬はとりあえずそのまま継続し、腰痛に対し一般的な痛み止めの内服薬と外用剤を処方し、自宅でリハビリを行いながら経過観察。1週間後痛みは和らいできたとのことで、そのまま痛み止めを継続。しかしさらにその1週間後、訪問看護師から急に腰痛が悪化してきたという連絡あり。そのため再び訪問診療を実施したところ、痛み止めなどは処方継続しているものの、確かに痛みの訴えが再び強くなっていました。そのため痛み止めを強いものに変更し経過観察。しかしその後も腰痛の改善なく、下肢の筋力低下も悪化する一方であるため、全身のCT検査なども総合病院で実施。特に内科的な原因での腰痛ではなく、一般的な腰痛という診断でした。その結果を本人に説明し、痛み止めをさらに強いものにするかを相談したところ、そもそも痛み止めをもらっていないという訴えがあり。認知症のため勘違いをしているのではと考え、ご家族に内服をしているか確認したところ、内服をしているとのこと。そのため内服の仕方に問題があるのではないかと考え、訪問薬剤師も導入。訪問薬剤師に服薬指導と内服できているかの確認をしてもらったところ、どうやら毎回ご家族が痛み止めだけを捨てて、ご本人に痛み止め以外の薬のみ飲ませているようだという報告があり。ご家族に確認したところ、痛み止めは害があると聞いたことがあり、飲ませたくなかったので毎回捨てていたとのこと。そのため問題症例であるため市の包括支援センターに介入を依頼。最終的にリハビリもできる療養型の病院への入院とし、訪問診療は中止としました。