医療コラム

介護医療コラム(50)「訪問診療 症例その三十七」

今回の仮想患者様kさんは60歳の男性の方で、高校生の頃から1日20本くらい喫煙をしているとのことです。過去に当院で禁煙治療を希望され実施するも、禁煙ができず喫煙を続けていました。約1年前に咳が止まらず血痰が出るとのことで当院を受診。胸部レントゲン写真で肺癌が疑われたため、総合病院の呼吸器内科に紹介。精密検査の結果、肺癌の診断で、腰椎という腰の骨の一部に転移も認められました。そのため手術ではなく抗癌剤治療が選択され、その後抗癌剤治療を繰り返し行いました。一時肺癌は小さくなるも、消失するまでには至らず、経過を見ながら違う抗癌剤に変更して投与を継続していました。ある日、急に腰に激しい痛みを感じたため、総合病院に再診したところ、腰椎の圧迫骨折が認められました。これは肺癌の腰椎転移によるもので、痛みが強く歩くこともできないため同日入院。骨転移に対して、点滴での治療と放射線治療が開始されました。その結果、腰の痛みは軽減するも、歩くことはできず車椅子の状態で退院。その後日常生活も困難となり、通院も困難となってきました。そのため主治医より、これ以上の抗癌剤などでの積極的な治療は困難であることを説明され、通院も困難となったため、当院に在宅緩和ケアの依頼があり。数日後自宅への訪問診療と訪問看護を開始。訪問診療開始当初から、腰椎の辺りの痛みがまた強くなってきているとのことで、痛み止めの内服と点滴での治療を開始。腰椎転移への点滴治療は、口腔ケアがきちんとできていないと合併症が起こるため、訪問歯科診療も依頼。また内服がきちんとできないことも増えてきて、残薬整理や服薬管理も必要と判断し、訪問薬剤指導も導入。自宅へ医師、看護師、歯科医師、薬剤師がそれぞれ定期的に訪問し、チーム医療で在宅緩和ケアを継続。その後肺癌が大きくなってきたことによる呼吸苦も出現。そのため在宅酸素投与も導入。その後痛み止めの内服も困難となり、モルヒネの貼り薬に変更し経過観察。しかし酸素投与を行っても呼吸苦が改善しないようになり、時折突発的に痛みも強くなることから、モルヒネの持続皮下注射に変更し在宅緩和治療を継続。その後呼吸苦や痛みの症状は緩和できるも、次第に病状の悪化に伴い、意識状態や呼吸状態、全身状態が悪化し、在宅緩和ケアを開始して約1か月後に自宅で永眠されました。

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