医療コラム

介護医療コラム(44)「訪問診療 症例その三十一」

今回の仮想患者様eさんは60歳の男性の方で、これまで特に大きな病気をしたことはなく、飲酒や喫煙もほとんどされない方で、職場の定期検診でも異常を指摘されることはありませんでした。約2週間前からみぞおちや背中の辺りに軽い痛みを感じるようになり、ここ1か月で体重が2㎏落ちているのが気になっていました。ある日トイレに行くと、尿がオレンジ色に見えたため、心配になり当院に受診されました。検尿の結果、尿中のビリルビンという成分が増加しており、黄疸が疑われました。そのため当院でその後胃カメラと大腸カメラ、腹部超音波検査、採血検査を約1週間かけて実施。胃カメラと大腸カメラでは特に問題ないものの、腹部超音波と採血検査にて、膵臓の腫瘍による黄疸が疑われたため、総合病院に紹介。CTやMRI検査の結果、膵臓癌の診断となりました。また膵臓癌により胆汁の流れが悪くなり黄疸となっていること、お腹の中のリンパ節転移が複数見られることがわかりました。そのため治療は手術ではなく、内視鏡で胆汁の流れをよくするステントというものを入れて黄疸が改善した後に、抗癌剤の治療を行う方針となりました。その後その治療が約1年間行われましたが、段々抗癌剤の効きが悪くなると同時に、体力的にも抗癌剤投与が難しくなりました。そのため総合病院の主治医から、これ以上の抗癌剤投与は難しいということを告げられ、緩和治療を行いながら自宅療養する 方針となりました。しかしその頃には、体力的に通院も難しい状態となっていたため、総合病院から当院に自宅への訪問診療による在宅緩和治療の依頼があり、退院後より訪問診療を開始。退院直後は、総合病院から処方されていた痛み止めなどで特に自覚症状はなく、ご自宅で好きなことをしながら療養をされていました。しかし次第に下肢のむくみや腹水が増加してきたため、利尿剤の投与を開始しその後徐々に増量。また徐々に腹部から背中にかけての癌性疼痛も強くなっていたため、モルヒネの飲み薬なども併用。倦怠感や食欲の低下も徐々に強くなり、ステロイドホルモンの投与も開始。それぞれの症状に対し緩和治療を行いながら自宅療養を継続していきましたが、療養開始約1か月後にはほぼ寝たきりの状態となり、薬を飲むのも困難となったため、モルヒネの貼り薬や持続皮下注射に切り替え療養を継続。その後約2週間家族の介護を受けながら、最期はご家族に見守られながら静かに息を引き取られました。

お問合せ

〒090-0065 北海道北見市寿町5丁目1-10

0157-26-6471

発熱などの症状のある方は、来院される前に必ずご連絡をお願いいたします。