医療コラム

介護医療コラム(43)「訪問診療 症例その三十」

今回の仮想患者様dさんは53歳の男性の方で、若い頃から強いお酒が好きで、ウイスキーや泡盛などをストレートで毎日のように飲まれていました。また1日20本程度の喫煙も若い頃から続けていました。約3か月前から肉の塊などを飲み込んだ時に、胸につかえるような感じが時折あるも、いつもではないため様子を見ていました。約1か月前からは、食事をよく噛まないと胸に食事がつかえることが増え、ここ最近では声のかすれも感じるようになってきました。さらにお酒を飲んだ時、胸がしみるような痛みも出てきたため、当院に初診となりました。数日後胃カメラで検査を行ったところ、進行食道がんを認め、食事の一部がすでに詰まっているような状況でした。そのため総合病院に紹介。総合病院での精査の結果、胸腹部の広範囲のリンパ節転移を認め、手術での治療は困難と判断。そのため抗がん剤での治療方針となりました。入退院を繰り返し、2コース抗がん剤治療を行うも効果に乏しく、抗がん剤の種類を変えてさらに2コースの抗がん剤治療を繰り返し行いました。しかし十分な効果は得られず、抗がん剤による副作用も強くなり、体力的にもこれ以上の治療には耐えられないと判断。余命半年と主治医から宣告され、つらい症状を和らげながら残された時間を過ごす緩和治療を行っていくこととなり、食事を詰まりにくくするように食道を広げておく食道ステントという処置を行った上で、自宅へ退院する方針となりました。退院後通院は困難そうであるため、自宅での療養のサポートは当院の訪問診療で行う方針となり、総合病院より当院に在宅緩和治療の依頼があり、退院後より訪問診療開始となりました。退院後、ご自宅で家族に囲まれながら、少しずつ好きなものも食べられ、たまにビールなどもご家族とお飲みになり、楽しそうに過ごされていました。時折胸の痛みなどの症状もあったため、通常の痛み止めとモルヒネ製剤を組み合わせながら、症状を緩和していきました。しかし次第に息苦しさと胸の痛みが強くなり、薬を飲むのも難しくなってきたため、モルヒネの持続皮下注射を開始するとともに、在宅酸素療法も開始。その後痛みや息苦しさに対する症状緩和が得られるも、少しずつベッド上で眠る時間が長くなっていきました。それでもご本人がそれほど苦しまれていないため、ご家族と相談し在宅療養を継続。その後ご家族の介護を受けながら次第に病状悪化し、ご自宅で最期は静かに息を引き取られました。

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