医療コラム

介護医療コラム(42)「訪問診療 症例その二十九」

今回の仮想患者様cさんは66歳の男性の方で、若い頃から1日40本程度の喫煙と、お酒が好きで毎晩5合の日本酒をほとんど欠かしませんでした。二〜三か月前から声がかすれるようになり、一〜二か月前からは食事が飲み込みにくくなったため、近くの耳鼻科に受診。検査の結果、進行喉頭がんと診断されました。手術での完治は難しいと判断され、総合病院に紹介。その病院で放射線治療と抗がん剤治療を受けることになりました。予定されていた治療を終え、経過観察となっていました。一時声のかすれと飲み込みが改善したように思われましたが、治療終了後の三か月後あたりから再び症状の悪化が認められました。検査の結果、喉頭がんは一時小さくなったものの、再び大きくなってきたという評価でした。今後の治療方針として、完治は難しいが、副作用が強い違う種類の抗がん剤治療を行っていくか、またはこれ以上積極的な治療は行わず、今後気道が塞がる恐れがあるため気管切開を行い、食事が飲み込めなくなる可能性が高いため、胃瘻という直接胃に栄養を流し込むチューブを胃に入れて、緩和治療を受けながら自宅療養するか、という二つの選択肢の提案があり。患者様と御家族で相談し、完治が難しいということから、気管切開と胃瘻をつくった後に緩和治療を受けながら自宅療養するという選択をされました。そのためそれらの処置を受けた後、当院に在宅緩和治療の依頼があり、総合病院退院後に当院訪問診療による在宅緩和治療を開始。喉頭部の痛みに対し、内服が困難であるためモルヒネ製剤の貼り薬を使用。また呼吸苦に対しては胃瘻からのモルヒネ製剤の屯用にて対応。その他夜間の不眠に対して睡眠導入剤、吐き気に対して吐き気止め、便秘に対して下剤などの内服薬をそれぞれ粉薬にして、胃瘻から定期投与を行いながら在宅緩和治療を行っていきました。ご家族の献身的な介護もあり、約二か月間自宅での療養を継続してきましたが、少しずつ喉頭がんからの出血が増えてきたこと、喉頭部の痛みに対してモルヒネ外用剤だけでは十分な痛みのコントロールができないことなどから、ご本人とご家族に相談し、出血と痛みの再コントロール目的に前医の総合病院に再入院することとしました。その入院数日後に容態が急変し、入院中にご家族も呼ばれ、ご家族に見守られながら入院中の総合病院にて永眠されました。

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