まず在宅医療の課題として、①訪問診療医が少ないこと、②家族の介護負担が大きいこと、③現在の在宅医療の保険制度では十分な在宅医療を提供できないこと、などが挙げられると私は思います。まず①ですが、これは大都市部では訪問診療医が多くいるためそれほど問題になりませんが、地方では訪問診療医がどこの地域でも不足しています。北見市内でも同様に不足しており、主な原因として挙げられるのは、全体の医師不足だと思います。例えば旭川市では人口10万人当たりの医師数は341.1人であるのに対し、北見市では188.0人です。そのため1人の医師がカバーすべき市民の数は、旭川市では約293人なのに対し、北見市では約532人です。全体の医師数が不足しているため、大都市部に比べ一人一人の医師の仕事量が多く、外来診療や入院治療で精一杯で、なかなか在宅医療に携わるまでには至らないというのが現状です。北見市の全体の医師数が増えればいいのですが、それは現在の日本の状況では非常に困難と思われます。これを解決するためには、医師会というよりは行政の力が必要となってくると思います。 次に②ですが、入院や施設入所に比べると、ほとんどの介護を御家族がしなくてはならないため、家族の時間的・身体的・精神的負担が大きいです。自宅で受けられるご家族の介護をサポートするサービスとして、訪問看護や訪問介護、デイサービス、ショートステイなどが挙げられますが、最大限それらのサービスを使ったとしても、大半はご家族の介護が必要となります。北見市ではようやく最近、レスパイト入院というのを行ってくれる病院が出てきました。これは在宅での介護負担が大きいご家族が、短期間ではありますが介護を休むことができるように、一時的に入院で患者様をみてくれるという入院のシステムです。しかし北見市では全体の入院できるベット数にも限りがあるため、なかなか介護負担が大きいご家族全体をカバーするには至らないというのも課題です。 最後に③ですが、これには色々ありますが、私がいつも思うのが、介護度により自宅で受けられるサービスには限りがあること、介護保険を使用する入所施設に訪問看護の導入が困難であることです。難病やがんの終末期であれば、訪問看護が医療保険で導入できるため比較的充実した在宅医療を提供できますが、老衰やその他の疾患においては、基本的に介護保険の限度内でしか対応できないため、十分な在宅医療を提供できないケースが多いのが課題です。