十二月になると気温が下がり寒くなってきます。寒くなってくると、胃腸への血液の流れが悪くなると同時に、胃腸の動きが悪くなってきます。そうなると多くなってくる消化器疾患の代表的なものとして、胃・十二指腸潰瘍と麻痺性イレウスが挙げられます。 胃・十二指腸潰瘍は、粘膜への血液の流れが悪くなりやすい、寒い季節に多い傾向があります。症状としては、多くはみぞおち付近の痛みやムカムカ感であることが多いですが、無症状の方も少なくありません。特に緊急を要する症状には、イカ墨のような黒い便が出る、赤黒い大量な下血がある、真っ赤な血やイカ墨のような黒いものを多量に吐いた、強烈なみぞおちから腹全体にかけての持続する痛みなどが挙げられます。イカ墨のような黒いものというのは、胃酸と胃から出た血液が混ざって黒くなったもので、胃潰瘍などから出血している時にみられるものです。これに対し、十二指腸潰瘍から出血していると、胃酸と混ざる量が少ないので赤黒い下血となることが多いです。これらの出血性潰瘍は、早急に胃カメラや薬剤で治療しなければ出血多量で命を落とすこともあり得るので、早急に治療が必要となります。また持続する強烈な痛みが出ると、潰瘍が深くなりすぎて胃や十二指腸に穴があいてしまい、胃や十二指腸の外に食べ物や胃酸が出てしまうことで腹膜炎を起こしている可能性があります。こうなると緊急手術をしなければ命を落とす可能性があります。 次に麻痺性イレウスとは、腸の動きが悪くなることで腸に貯まったものが流れなくなり、腹痛や嘔吐の症状が出る病気です。寒い季節になると胃腸の動きが悪くなるため、身体を動かして胃腸を動かすようにしなければ、この病気になりやすくなります。特に腹部の手術や脳梗塞、脳出血をされている方は、なりやすいので要注意です。麻痺性イレウスの治療は、基本的には腸に貯まったものを外に出す治療と、同時に腸を動かす治療が必要となります。腸に貯まったものがそれほど多くなく、軽度の麻痺性イレウスであれば、内服や点滴で腸を動かすような治療を行えば改善します。しかし腸の動きが非常に悪かったり、腸に貯まっているものがかなり多い麻痺性イレウスの場合には、腸を動かす治療の他に、イレウス管という腸に貯まったものを外に出す管を鼻から小腸に入れます。それでも改善しない場合には、手術も検討されます。