胃潰瘍と十二指腸潰瘍(以下、潰瘍と記載)は冬から春にかけて患者様の数が多くなる印象があります。冬はしょっぱいものを良く食べるので粘膜がダメージを受けやすく、寒さにより粘膜の血流が悪くなることで潰瘍になりやすくなります。春は引っ越しや職場の変更などによりストレスが増え、ストレスは胃酸の分泌量を増やすため潰瘍になりやすくなります。ちなみに男性のストレスの原因第1位は職場の変更で、女性のストレスの原因第1位は引っ越しと言われています。時期的なものの他に潰瘍の原因となる代表的なものには、飲酒や刺激物、喫煙、ストレス、ピロリ菌の感染、薬剤などがあります。飲酒や刺激物(塩分が多い食べ物、辛いもの、コーヒーなど)は粘膜にダメージを与え、喫煙は粘膜の血流を悪くし、ストレスは胃酸の分泌量を増やし、ピロリ菌感染は粘膜を弱らせるため、潰瘍になりやすくします。潰瘍の原因となり得る薬剤は、痛み止め(内服薬・坐薬)や血をサラサラにする薬、ステロイド薬、骨粗鬆症の薬などの一部が代表的で、これらは粘膜の修復を弱らせることなどによって潰瘍の原因となります。次に症状ですが、多くはみぞおち付近の痛みやムカムカ感であることが多いですが、無症状の方も少なくありません。特に緊急を要する症状には、イカ墨のような黒い便が出る、赤黒い大量な下血がある、真っ赤な血やイカ墨のような黒いものを多量に吐いた、強烈なみぞおちから腹全体にかけての持続する痛みなどが挙げられます。イカ墨のような黒いものというのは、胃酸と胃から出た血液が混ざって黒くなったもので、胃潰瘍などから出血している時にみられるものです。十二指腸潰瘍から出血していると、胃酸と混ざる量が少ないので赤黒い下血となることが多いです。これらの出血性潰瘍は、早急に胃カメラや薬剤で治療しなければ出血多量で命を落とすこともあり得るので、早急に治療が必要となります。また持続する強烈な痛みが出ると、潰瘍が深くなりすぎて胃や十二指腸に穴があいてしまい、胃や十二指腸の外に食べ物や胃酸が出てしまうことで腹膜炎を起こしている可能性があります。こうなると緊急手術をしなければ命を落とす可能性があります。以上のように潰瘍は身近な病気ですが重症な状態にもなり得る病気で、これらの症状がある方は早急に病院への受診が必要です。また潰瘍は繰り返す方が多く、治療途中で痛みが無くなったから治ったと自己判断で通院を中止してしまう方がおられますが、それは危険です。自己判断せず医師の指示に従いきちんと治療しましょう。