今回の仮想患者様Bさんは70歳の男性の方で、総合病院で膵臓癌と診断され、これまで約1年間抗癌剤治療などを受けてきました。しかし残念ながら抗癌剤の効果が乏しくなり、体力的にも抗癌剤治療の継続が難しくなりました。痛みも出てきたため、モルヒネ製剤の処方を受けながら外来通院を継続していましたが、通院が困難となり痛みも強くなってきたため、痛み止めの調整のため同院に入院。主治医より余命は3か月程度と告げられ、奥さんが本州の息子さんにその旨連絡。数日後、息子さんがBさんに会いに入院中の病院に行くも、新型コロナ禍のため、発熱がないオホーツク管内の家族以外は病棟へは入れないと言われました。またオホーツク管内でも新型コロナ患者さんが出ていることから外泊の許可も出ず、Bさんはこのまま入院していると、息子さんにも会えないまま入院継続を余儀なくされると考えました。そのため主治医に自宅へ退院し、在宅で緩和治療を受けたいと希望。そのため当院に訪問診療による在宅緩和治療の依頼があり、数日後入院先で退院カンファレンスを開き、自宅退院のための介護ベッドや訪問看護などの手配を実施。その数日後自宅退院となりました。息子さんはこちらに来る2週間前に本州の方でPCR検査を受け陰性を確認し、こちらに来てからほとんど外出せず実家に滞在して、発熱や上気道症状なども認めなかったため新型コロナウイルスに感染している可能性は低いと考え、その後Bさんと数年ぶりに再会。息子さんはその数日後に一旦本州に帰られ、引き続き当院訪問診療と訪問看護にて在宅緩和治療を継続。ご本人はご家族に介護で迷惑をかけるが、息子さんともゆっくり話ができて、奥様とも面会時間などを気にせずゆっくり一緒にいられるため、自宅に思い切って退院して良かったとお話されていました。自宅退院されてから約2か月後、黄疸が出現して肝不全兆候が出てきたため、余命2週間程度と判断。本州の息子さんに連絡し、再度PCR検査を受けてからこちらに来てくださいと連絡。数日後に来て頂きましたが、今回は症状観察が十分にできていないため、自宅では息子さんにマスクの着用と手洗い、定期的な換気などの感染対策をしっかり実施して頂きました。その後徐々に意識状態が悪化し、息子さんが戻られて約10日後に自宅で奥様と息子さんに見守られながら、Bさんは静かに息を引き取りました。Bさんの息子さんは、新型コロナ禍でなければ、お孫さんなども一緒に連れてきて会わせることができたのにとその点を残念がられていました。