医療コラム

新型コロナ禍での診療②

今回の仮想患者様Aさんは80歳の男性の方で、肺気腫という病気で市内の病院に以前から定期的に通院していました。肺気腫の影響で酸素が取り込みにくく、自宅でも通院時にも酸素をつけながらの生活を余儀なくされていました。 肺気腫は肺炎にもなりやすく、これまで通院中の病院に何度か肺炎で入院したこともありました。オホーツク管内で新型コロナウイルスの感染者が出た頃から、肺気腫の方が新型コロナウイルスによる肺炎になると重症化しやすいとニュースなどで聞いたことから、Aさんはこわくなり外出する機会が減ってしまいました。また通院も心配になり、ご家族に代理で受診して薬をもらってきてもらうことがしばらく続いていました。 その後も外出することが減り、家でも横になっていることが多くなったことから、下肢の筋力が落ちてしまい、いざ外出や通院をしようと思ってもできなくなってしまいました。そのためご家族が通院中の病院で相談したところ、訪問診療で定期的にみてもらった方が良いのでは?と提案され、当院を紹介されました。 後日、ご家族が当院にその相談で紹介状をお持ちになり来院。新型コロナ禍であり、もし肺炎になって入院治療を希望されたとしても、今までと違ってすぐ入院を受け入れてもらえない可能性があることをご家族に説明。ご家族から、本人はもしまた肺炎になっても入院治療は希望しておらず、自宅でできる範囲の治療を受けて、それで改善しないのであれば最期を自宅で迎えたいと以前から話しているとのことでした。そのためご本人の意思を尊重する方針で、数日後より自宅への訪問診療と訪問看護を開始。自宅での生活の状況を確認したところ、自宅で入浴することやトイレに行くことも下肢の筋力低下のため難しくなってきていたため、デイサービスでリハビリや入浴をしてもらえるところを探し、デイサービスを開始。その後徐々にではあるものの下肢の筋力が改善し、定期的に入浴ができて身体がすっきりすると本人は喜んでいました。 その後ご本人からも、今後もし調子が悪くなっても入院はせず、点滴なども痛いのでしたくないので、自宅で飲み薬程度の治療でダメなら、自宅で最期を迎えたいとお話があり、今後もその方針で訪問診療と訪問看護を続けることとしました。

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