医療コラム

介護医療コラム(61)「訪問診療 症例その四十八」

今回の仮想患者様vさんは92歳の女性の方です。生来健康で、ほとんど病院にもかかったことがなく、一人暮らしで畑仕事もしていました。また認知症もなく、身のまわりのことも全て自分でできており、バスで買い物に行くなど非常にお元気な方でした。東京に息子さんが一人いて、息子さんが帰省する度に、「もう十分生きたからいつお迎えが来てもいい。慣れ親しんだ家でポックリ死ねたらいい。もしがんになったら年だから治療はしなくてよいが、痛みなどの辛いことは薬などでとってほしい。」とお話されていました。息子さんが帰省したある時に、vさんが急にやせた印象がありました。そのため息子さんがどこか調子が悪いところはないか尋ねたところ、「食事はとれているが、最近微熱が続いていて、身体がこわい。畑仕事も最近できなくなりやめた。」とお話されました。そのため心配した息子さんが、vさんを連れて近くのクリニックを受診。採血検査にて、貧血が認められることと、LDHという値が非常に高値であることから、血液の病気かもしれないとのことで、総合病院の血液内科に紹介されました。そこで精密検査の結果、CTで全身のリンパ節が腫れていて、可溶性IL2−rという値が非常に高値であることから、悪性リンパ腫の可能性が高いと説明されました。また治療は抗がん剤治療になるが、高齢であるため治療を行うリスクが高いという説明も受けました。一旦家に帰り、vさんと息子さんは今後のことについて話し合いました。vさんは、治療は受けずに慣れ親しんだ家で最期まで過ごしたいという希望が強く、息子さんは東京で仕事もあるためずっといることはできず、どこかの病院に入院するか施設に入所した方がよいと説得。しかし本人は頑なに入院や施設入所はしたくないとのことで、もう一度総合病院の医師に受診。本人の希望を伝えたところ、在宅緩和治療を勧められ、当院に紹介状をお持ちになり受診。再度話し合った結果、ご本人の意志を尊重し、自宅での緩和治療を行い、状態が悪くなった際にはその都度相談することとしました。後日ケアマネージャーを決め介護保険の申請を行い、自宅への訪問診療と訪問看護、訪問薬剤指導、訪問介護にて在宅緩和治療を開始。内服薬で発熱や倦怠感などの苦痛症状は緩和されましたが、次第に貧血の進行と体力の低下で寝たきり状態となりました。しかし息子さんが介護休暇をとり、そのまま自宅での看取りを行える体制となったため、そのままご本人の意志を尊重し自宅での緩和治療を継続。その後息子さんの介護を受けながら、ご自宅で安らかに最期を迎えられました。

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