医療コラム

介護医療コラム(47)「訪問診療 症例その三十四」

今回の仮想患者様hさんは70歳の女性の方で、特にこれまで大きな病気をしたことがなく、健診でも特に異常を指摘されたことはありませんでした。数か月前くらいから、食後に右脇腹辺りに違和感のようなものを感じたり、微熱が出るようなことがありましたが、特に大きな痛みなどもないため様子を見ていました。数日前から何となく体がだるく、尿がオレンジ色に見えることに気が付きました。家族に白目の部分と顔が何となく黄色いのではないかと言われ、数日後当院に受診。受診時黄疸が疑われたため、腹部超音波検査と採血検査を実施。腹部超音波検査にて、肝臓内の胆管という胆汁が流れる管が拡張し、胆嚢も拡大していることがわかりました。また採血検査では、肝機能障害と胆道系酵素の上昇、黄疸を認めました。そのため胆汁が流れる胆管という臓器の病気が疑われたため、同日総合病院消化器内科に紹介。その後約2週間かけてその病院で精密検査が行われた結果、胆管癌という診断となりました。また肝臓内に数個小さな転移も認められたため、手術ではなく抗癌剤治療を行う方針となりました。黄疸を改善させる処置を行った後、約1年間抗癌剤治療を何度か薬の種類を変更しながら行いました。しかし腫瘍を小さくすることは困難という判断となり、体力的にもこれ以上の抗癌剤治療は厳しい状況であり、主治医より緩和医療を勧められました。hさんはしばらく落ち込み、何もする気が起きない状態となりましたが、家族などの支えもあり、これ以上治療ができないのであれば、外来通院で痛みなどの苦痛な症状を緩和する治療を受けながら、残された時間を家族と旅行などをしながら過ごすことにしました。その後約3か月間、医療用麻薬の処方などを受けながら外来通院していましたが、外来の待ち時間が辛くなり、病院に行くのもかなり辛くなってきました。そのため主治医に相談したところ、当院での訪問診療による在宅緩和治療を勧められ、当院に再診。数日後より自宅への訪問診療を開始しました。当初は前医からの医療用麻薬などの飲み薬を、少しずつ症状を伺いながら調整していきましたが、次第に飲むのも困難となったため、医療用麻薬を貼り薬や座薬、注射剤などに変更していき、症状の緩和に努めました。しかし黄疸の悪化と共に意識状態も次第に悪化し、訪問診療を始めて約1か月後、ご家族に見守られ永眠されました。

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