医療コラム

介護医療コラム(19)「訪問診療 症例その八」

今回の仮想患者様Hさんは78歳女性の方で、脳梗塞の既往があり、介護を受けながらの生活が必要であるため、グループホームに入所中でした。通院も困難であるため、当院では約1年前より施設への訪問診療にて、脳梗塞後遺症への抗血小板剤などの処方を継続しておりました。約1か月前から膝と腰の痛みが強くなったため歩行が困難となり、車椅子とベッド上での生活を余儀なくされ、ストレスが溜まってきているとのことでした。膝と腰の痛みも湿布などでは改善しないため、痛み止めの内服薬や座薬を開始。しばらく痛み止めを続けて様子を見ていました。膝と腰の痛みは良くなってきていたものの、食欲が落ち胃の不快感を感じるようになっていました。そうした矢先、便がイカ墨のように黒くなり、血圧の低下や動悸、息切れ、倦怠感などの症状も出現。そのため、施設より急遽往診の依頼があり、緊急往診を実施。診察上、上部消化管出血が疑われたため、すぐ当院で胃カメラを実施。胃カメラを行ったところ、胃潰瘍から出血していることが判明し、総合病院へ紹介し救急搬送。同日患者様は入院となり、入院での治療が開始となりました。 今回の症例で、胃潰瘍ができた誘因として考えられるのは、①脳梗塞後遺症に対し内服していた抗血小板剤、②ストレス、③痛み止めの内服と座薬、です。①の内服は胃に負担となることがあり、胃潰瘍の原因となり得ます。さらに胃潰瘍ができて出血した場合に、血がサラサラになっているため、出血が止まりにくく大量出血の原因にもなり得ます。②はストレスによる胃酸過多などが原因で胃潰瘍の誘因となります。③も胃に負担になることと、胃粘膜の再生に悪影響を及ぼすため胃潰瘍の原因となります。しかし①の内服は、脳梗塞の再発を予防するためには必要な薬であることと、③により痛みを取らなければ、今度は痛みによるストレスで胃潰瘍になることも考えられます。そのため胃潰瘍になる危険性が高いと予想される場合には、抗血小板剤や痛み止めを使用する際に、胃薬を併用することが必要と考えられます。自宅や施設で療養されている方で、特に身体の自由がきかない方は、ストレスを感じられることが多いため、注意が必要と考えられます。

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