医療コラム

介護医療コラム(18)「訪問診療 症例その七」

今回の仮想患者様Gさんは84歳女性の方で、60歳代の頃アルツハイマー型認知症と診断され、内服加療を受けながら療養していました。しかし次第に認知症の悪化を認め、自宅での生活が困難となり、約5年前に施設に入所。介護を受けながらの生活を送っていました。約1年前から食欲が低下し、食事があまり摂れない時には、通院中の病院から処方された栄養剤を飲みながら療養されていました。約1週間前から下痢をするようになり、様子を見ていたが改善がなく、食事の量も次第に低下してきました。通院は体力的に困難とのことで、通院中の病院より当院に訪問診療の依頼があり。依頼があった数日後より入所施設への訪問診療を開始しました。 この症例において、下痢の原因として考えられるのは、①感染性胃腸炎、②消化不良による下痢、③栄養剤による下痢、④消化器癌などが考えられます。①は特に冬季などに多く、ウイルス性胃腸炎などの感染症による下痢です。この場合には、同施設の他の入所者に下痢をしている方がいたり、嘔吐や発熱を伴うことが多いです。治療としては、嘔吐や脱水が強く認める場合には食事を中止し、点滴や内服薬にて治療を行います。②は高齢の方で老衰傾向となってくると食事がうまく噛めなくなったり、痩せて入れ歯が合わなくなりうまく噛めなくなる、胃腸の消化吸収の機能低下などの理由により、消化不良で下痢をするという機序です。この場合には、消化吸収を助けるような内服薬の投与を行ったり、食事の形状の変更、必要時には歯科医に入れ歯の調整などの依頼を行う場合もあります。③は栄養剤の中には脂肪分が多く含まれているため、それにより下痢をする場合があります。この場合には、栄養剤の変更や消化吸収を助けるような内服薬の処方などで対応することが多いです。④は特に胃癌や大腸癌で起こることが多く、進行癌の場合には、体重減少やむくみなども見られることがあります。この場合、体力的に可能であれば、胃カメラや大腸カメラ、CT検査などにより病気の検索を行います。 下痢が続くと、脱水や電解質異常、栄養状態の悪化などにより全身状態が悪化することがあるため、これらの病気を考えながらの対応が必要となると考えられます。

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