北見市は、人口が同じくらいの釧路市と比べると市立病院がないため、総合病院クラスの病院が1つ少ないような状況です。ということは市内全体の入院病床数が少ないため、釧路市に比べると、長期に入院できない患者様が多いと考えられます。では長期に入院できない患者様は、どのように治療や療養をすれば良いのでしょう? その受け皿の一つとして挙げられるのが、入所施設や自宅での在宅医療です。 北見市内では、数軒の診療所で在宅医療を行っています。その内の1軒が当院です。当院では現在、自宅への訪問診療を行っている患者様は約30名、施設への訪問診療を行っている患者様は約120名です。当院に自宅または入所施設に訪問診療の依頼を頂く方の多くは、老衰や病気のため通院が困難であったり、病院で診察を受けるまでの待ち時間を体力的に待つことが困難という方々です。また病状が不安定で、入退院を繰り返しているような方では、ご本人がもう入院はしたくないという理由や、御家族が入院しても付き添いが困難などの理由で、在宅医療の依頼を頂くこともあります。さらに最近増えてきているのが、老衰や慢性疾患、がんの終末期の患者様が、自宅や入所施設で最期を迎えたいという希望で、訪問診療の依頼を頂くようなケースです。当院では平成21年からの約5年間で、自宅または入所施設で約130人の患者様を看取らせて頂いております。入院に比べると、自宅や入所施設で最期まで過ごすためには、御家族や介護者の介護負担が大きく、行える医療も限られてはいます。しかし患者様ご自身からすると、住み慣れたところで、自分の事をよくわかってくれている家族や介護者からの介護を受けながら最期を迎えるというのは、安心できるのではないでしょうか。積極的な治療はいらないが、自宅や入所施設で療養したいという患者様には、在宅医療は良い選択肢の一つと考えます。北見市内でも、このような選択をされる患者様や御家族は増えてきております。しかし大都市部に比べると、診療所数も少ないため、在宅医療に関われる医師数も多くはありません。ですがせめて、積極的な治療は希望されず、住み慣れた所で最期までという御希望の患者様には、私を含めた北見市で在宅医療を行っている医師は、可能な範囲でなるべく対応したいと考えています。市民の方々には、限られた在宅医療資源を大切に、なおかつ上手に利用して頂ければと思います。