暑い夏も終わり、十月は脂ののったおいしい魚やいくらなどの魚卵なども出てきて、肉や揚げ物などの摂取量も増えてくる、食欲が増す季節だと思います。これら脂物の摂取量が増えると、胆道系臓器と膵臓に負担がかかり、そのあたりの病気が増えてきます。 胆道系臓器には胆嚢と胆管があります。肝臓で作られた消化酵素の胆汁が胆管を通り胆嚢に一度貯められ、食事をすると胆嚢が収縮し再び胆管を通って十二指腸から胆汁が放出されます。胆汁は主に脂肪を分解する際に活躍する消化酵素なので、特に脂物を食べた場合にはこの働きが活発になります。その為、胆嚢や胆管に結石があるとそれらの結石が動くため、みぞおち~右の脇腹辺りが食後に痛んだり、発熱や黄疸が出ることもあります。また結石の有無にかかわらず、胆嚢に炎症が起こる胆嚢炎や、胆管に炎症が起こる胆管炎が発症しても、同様の症状が出現します。胆道系臓器に炎症が起こると、基本的には入院で絶食+点滴の治療を行いつつ、さらに結石があれば内視鏡や手術での治療も必要となります。 次に膵臓についてです。膵臓は胃と十二指腸に囲まれ胃の後ろに位置する臓器で、糖代謝と消化に関わっています。消化の働きとしては、トリプシン、アミラーゼ、リパーゼなどの消化酵素を含んだ膵液を膵管から十二指腸に放出し、蛋白質や炭水化物、脂質の消化に関与しています。その為胆道系臓器と同様に、脂物を摂取した場合にはこの消化の働きが活発になります。またアルコールも膵臓に負担をかけるため、脂物やアルコールを摂取した後に、急激な腹痛や背部痛が出現した際には、急性膵炎を疑います。一方、長期間の脂物やアルコール摂取、急性膵炎を繰り返している方で、腹痛や背部痛を繰り返している方では、慢性膵炎を疑います。膵炎の中には急激にひどい膵炎を起こす重症急性膵炎という状態もあり、これを発症すると命にかかわることもあります。急性膵炎や慢性膵炎が悪化した際の治療としては絶食+点滴の治療となり、改善後には低脂肪食+禁酒が必要となります。 以上のような疾患が、脂物を摂取すると発症しやすくなります。その為、特に結石や慢性膵炎をお持ちの方は、脂物の摂取は避けたほうがよいと思われます。それらがない方も、急激な脂肪分の大量摂取は、これらの疾患の発症のリスクとなりますので、避けるべきだと思います。