皆さん、過敏性腸症候群という病名を聞いたことがあるでしょうか? 以前テレビのコマーシャルでは、IBSと呼ばれていました。この病気は、胃や腸を検査しても特に異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛、お腹の張りなどの症状が頻回に起こるという病気です。胃腸は自律神経という神経で動きなどが調整されています。IBSは、この自律神経の調整がうまくとれなくなることで、症状が出現します。また自律神経は、思春期や更年期のホルモンバランスが不安定な時期や、生活リズムの乱れや過度なストレスがある状態で、バランスが崩れやすくなります。代表的なケースでは、小学校高学年から中学生くらいにかけての思春期の時期に、朝学校に行く前や学校の授業中にお腹が痛くなったり、便を頻回にしたくなるようなことがあります。また大人でも仕事の大事な会議中などに、同様の症状が出ることで仕事に支障をきたしてしまうケースもあります。どなたでも一度くらいはこのようなことを経験したことがあると思います。しかしこの症状が毎日のように出てしまい、日常生活に支障をきたしてしまうようになれば治療の適応となります。治療の方法としては、まずは自律神経の調整を安定させるために、暴飲暴食や喫煙、多量のアルコール摂取を控えて規則正しい生活を送るように心掛けます。次にストレスの原因となっているものを把握し、それを取り除くことができるのであれば取り除く。それでも改善しない場合は、消化器内科での薬物療法や、心療内科などでの心理療法や薬物療法が必要と考えられます。最初にもお話しましたが、このIBSはあくまで胃や腸を検査して何も病気がない時に初めて診断することができます。このIBSと鑑別しなければいけない病気に、潰瘍性大腸炎とクローン病という病気があります。これらの病気は炎症性腸疾患と呼ばれ、腸に炎症を起こすことで腹痛と下痢、下血を繰り返し、IBSと同様にストレスで悪化するという特徴を持つ原因不明の病気です。これらの病気を否定するためにも、胃カメラや大腸カメラなどでの検査が必要と考えられます。 もしIBSのような症状で日常生活に支障をきたしている方がいらっしゃいましたら、一度消化器内科や心療内科などで相談してみてはいかがでしょうか?