医療コラム

「医師の働き方改革について」

 最近、医師の働き方改革という言葉をよく耳にすると思います。これは何を改革するかというと、医師の長時間労働を減らすというものです。医師はこれまで職業柄、長時間労働はある程度やむを得ない職業として対応されていました。その結果、医師の過労死や自殺、うつ病の発症、燃え尽き症候群などが増え、問題視されるようになりました。そのため医師も他の職業と同様に、極力長時間労働を減らすようにするという国の方針になりました。これに違反する病院には、罰則が科せられます。  私が勤務医をしていた約15年前では、午前7時頃に病院に出勤して、私が主治医の20人くらいの病棟の患者さんを回診して、午前9時から外来を開始。昼食や休憩もとれずに15時頃まで外来診療を行った後、内視鏡検査や治療を行い、18時頃また病棟の回診をします。その後当直が当たっている日には、そのまま当直に突入。朝まで少しまとめて仮眠ができれば良い方で、合計で2~3時間睡眠くらいで、朝まで救急外来に来る患者さんや救急車の対応を行います。その当直業務が終了後も家に帰ることはできず、そのまま前日と同様に病棟回診や外来診療を行います。そのため仮眠程度で、約36時間続けて勤務のようなことはよくありました。こうならざるを得なかった一因が、かつては主治医制だったからだと思います。主治医制とは、基本的に入院患者さんの検査や治療、緊急時の対応、説明などを担当する医師のみが全て行うというものです。現在では、3人くらいの医師で1人の患者さんを担当するチーム制となり、交代で休めるようになりました。  人口当たりの医師数が多い都市部では、働き方改革を実現するために多くの医師で役割分担をして対応します。例えば当直した医師は、朝になったら他の医師にバトンタッチして家に帰って休むということになります。ところが、特にこのオホーツク地域のような人口当たりの医師数が少ない地域では、これを行うと日中働ける医師が減ります。日中働ける医師が減ると業務に支障をきたすという病院では、夜間や休日あるいは平日の救急外来に来る患者さんや救急車の対応が行えなくなる可能性があります。もしこのようなことが起これば、この地域の特に一次・二次救急医療が危機的な状況に陥ります。国は医師の数を増やすことはせず、都市部の医師を地方に移動させることもできません。そのため医師の働き方改革が始まった今、この地域の一次・二次救急医療の崩壊を防ぐためには、まずは市民一人一人の夜間休日当番病院と救急車の適正利用が絶対に必要です。

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