医療コラム

介護医療コラム(37)「訪問診療 症例その二十五」

今回の仮想患者様Yさんは97歳の女性の方で、これまで特に大きな病気をしたことがなく持病もないため、定期的に通院なども必要ありませんでした。娘さん夫婦と一緒に暮らし、ほとんど身の回りのことは自分で行うことができ、日中には近所の散歩も一人でされるくらいお元気な方でした。 約1か月前に、自宅で夜間トイレに行く際に誤って転倒してしまい、腰と肩を痛めてしまいました。家族に付き添われ整形外科で診察を受けるも、幸い骨折などはなく打撲程度と診断を受け、痛み止めと湿布を処方され自宅で療養していました。約1週間後には痛みはやや改善したものの、それまで痛みで横になっていることが多かったため、下肢の筋力が落ちてしまい、家族に支えられないと歩けなくなってしまいました。自由に自分で動けなくなったためか、食欲の低下と便秘も認めるようになりました。病院に連れて行くのも困難であるため、御家族が当院に来院され訪問診療を希望。そのため数日後訪問診療を開始。まず行ったのが、これまでお元気で介護保険の申請をされたことがなかったため介護保険を申請。同時に採血検査や診察を実施。結果貧血や肝機能、腎機能などに大きな問題はなく、栄養状態の低下と中等度の脱水を認める程度でした。とりあえず、動けなくなったことにより、ストレスで胃に負担がかかり食欲が低下している可能性があるため胃薬を処方。またそれにより腸の動きも悪くなり、便秘をしている可能性が高いため下剤も処方。さらに御家族から脱水もあることから点滴の希望があり。御家族に自宅で点滴を行うためには訪問診療だけでは難しく、訪問看護師に依頼し、1か月間に連続して14日間までしか制度上点滴を実施できないことを説明。御家族も納得され、翌日より訪問看護を導入し約14日間点滴も実施。また介護保険で電動ベッドのレンタルや歩行器のレンタル、住宅をバリアフリーに改修。御家族の懸命な介護もあり、次第に食欲も改善し少しずつ動けるようになりました。さらにその後、訪問リハビリも導入し、理学療法士による自宅でのリハビリの継続で、歩行器で最低限度の移動は自分で行えるようになりました。その後デイサービスにも通えるようになり、外出することで気分的にもお元気になられました。 この症例のようにうまくいくことは、正直多くはありません。しかし御高齢の方でも体調を崩されて比較的早い段階で対応できれば、完治は困難でも少し改善できることもあります。

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