医療コラム

介護医療コラム(36)「訪問診療 症例その二十四」

今回の仮想患者様Xさんは68歳の男性の方で、生まれた時から手足に障害があり、また脳の発達にも障害がありました。そのため自分では歩くことができず、小さい頃から車椅子で生活されていました。また脳の発達障害の為、他の人との意思の疎通はとれず、時にはイライラして大声を出したり、暴力を振るってしまうこともありました。日常生活においては、着替えや食事、入浴、トイレに至るまで、介助を受けなければ生活を送れないため、30歳くらいまでは自宅で両親からの介助を受けて生活していました。しかし両親が高齢となり、家での介助が困難となったため施設に入所。その後は施設で介助を受けながらの生活を送られ、65歳時までは大きな変化なく過ごされていました。65歳時の施設の健康診断にて糖尿病が指摘され、治療が必要な状態となりました。しかし病院へ連れて行っても慣れない環境の為か大声を出してしまったり、待ち時間を長く待つことができないため、当院に施設への訪問診療による糖尿病治療の依頼があり。約1週間後より訪問診療を開始しました。採血するのも拒否が強く困難でしたが、内服薬などで糖尿病のコントロールは良好となり、その後約3年安定し経過していました。しかし68歳になられた頃から、食事量が徐々に低下していき、体重も減少傾向となりました。何か原因がないか胃カメラやCT検査などで全身を調べてみましたが特に異常はなく、老衰によるものと判断しました。 両親はすでに他界されていたため、患者さんの兄弟の方に状況を説明し、点滴や胃に穴をあけてそこから栄養を投与する経管栄養などの延命処置の方法もあるが、恐らく点滴や経管栄養を行っても自分で抜いてしまう可能性が高いことも説明。兄弟の方は、それらの処置をすると本人の苦痛がむしろ多くなることが予想されること、もし病院に入院して点滴などを行うにしても、慣れない環境で精神的に不安定となり、入院の継続は困難である可能性が高いことから、これまで長年住み慣れた施設で最期まで過ごさせてあげたいという希望があり。そのため食べられる範囲での食事にて、そのまま施設で経過観察。約1か月後にいつも介助してくれていた施設職員と、付き添っていた家族に見守られながら、安らかに永眠されました。 実際私は、精神発達遅滞や精神疾患の方の訪問診療も行っておりますが、それらの疾患の方々は、平均寿命より10〜20歳くらい早く老衰状態となる 印象があります。また入院での対応というのも難しい状況であることが多く、今回のケースのように施設で最期まで診させて頂くことも多くなってきています。

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