医療コラム

介護医療コラム(65)「訪問診療 症例その五十二」

今回の仮想患者様zさんは58歳の男性の方で、これまで定期的に職場の健診を受けていたが、特に異常は指摘されていなかった。最近食事をしていると、すぐ満腹になるような感じがあり、ズボンやベルトも少しきつくなってきていたため、太ったかな?と感じていた。それから約1か月後、動いた時に息切れをするようになり、お腹の張りもさらに増強。下肢のむくみも出てきたため、仕事が休みの日に近医を受診。採血検査で貧血を認め、腹部超音波検査を受けたところ腹水が貯まっていることがわかり、後日近医から総合病院に紹介。総合病院でCT検査を受けたところ、腹水を認める他に、両側の肺と肝臓に多発する腫瘍を認め、転移性肺腫瘍と転移性肝腫瘍を強く疑われた。しかし脳や甲状腺、胆嚢、胆管、膵臓、腎臓、前立腺には明らかな腫瘍は認められないため、後日胃カメラと大腸カメラを実施。胃カメラでは食道癌や胃癌、十二指腸癌は認められず、大腸カメラでも大腸癌や直腸癌は認められなかった。さらにカプセル内視鏡とPET—CTも行われるも、明らかな小腸癌も認めず、腹水を採取し顕微鏡の検査にて腺癌が認められたことから、診断は最初に癌ができたところがどこか特定できない原発不明癌(腺癌)となった。また肺と肝臓に多発転移も認めることから、腺癌に効果が期待される抗癌剤治療を選択され治療を開始。抗癌剤の2コース目くらいから、腹水はやや減少傾向を示したが、肺と肝の多発転移は縮小せず。その後抗癌剤の種類を変更し治療を継続するも、再び腹水が増え始め、肺と肝の転移は悪化が認められた。そのためこれ以上の抗癌剤での治療は効果がないと判断され、体力的にも治療の継続は厳しいため、今後は自宅での緩和治療を希望。後日総合病院から当院に訪問診療での在宅緩和治療の依頼があり、訪問診療を開始。定期的に自宅に訪問し、痛みや発熱、吐き気、便秘、倦怠感などに対し飲み薬にて症状の緩和を行いながら経過観察。しかしその後、黄疸と意識障害が出現し、転移性多発肝腫瘍による肝機能の著しい低下である肝不全状態となり、内服も不能となったため、モルヒネの貼り薬にて緩和治療を継続。ご本人は意識障害があるため、ご家族と今後のことを相談。ご家族からご本人は元気な頃から、もし病気が治らない状態となったら、自宅で最期を迎えたいと話していたため、自宅で最期を迎えることを希望。その数日後、呼吸状態が悪化し、ご家族に見守られながらご自宅で息を引き取られました。

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