医療コラム

介護医療コラム(64)「訪問診療 症例その五十一」

今回の仮想患者様yさんは63歳の女性の方で、若い頃から飲酒と喫煙を毎日続けてきました。健診もこれまで受けたことがなく、特に調子の悪いところもないため、病院に受診したことはほとんどありませんでした。ある日、立ちくらみや階段を上がると息切れがするようになったため、当院に初診となりました。採血検査にて貧血を認めたため、まず胸部レントゲン写真を撮影したところ、喫煙による肺気腫と3㎝程の肺腫瘍を認めました。また後日胃カメラを実施したところ、進行した食道癌と胃癌を認めました。そのため総合病院での精密検査と治療が必要と判断し紹介。検査の結果、肺腫瘍も転移ではなく、原発の食道癌+胃癌+肺癌の多重癌と診断されました。貧血の原因は胃癌からの出血であったため、まず胃癌に対し手術を行い、その後食道癌と肺癌に対しては、抗癌剤+放射線治療が行われました。治療は長期に及びましたが約3か月後に一時退院、外来フォローとなりました。その後は飲酒と喫煙はやめて外来通院をしていましたが、約6か月後のCT写真にて、食道癌と肺癌の進行を認め、さらには肝臓に転移を認めたため、これ以上の積極的な治療は困難と判断されました。そのため主治医より緩和治療を勧められ、紹介元であった当院に逆紹介となりました。その後約1か月間は、自覚症状もそれ程なかったため、ご主人に付き添われながら外来通院にて経過観察。その後食事が食道あたりで詰まるようになり、発熱を繰り返すようになったため、ご本人に入院か在宅での緩和治療をお勧めしたところ、ご主人と相談され在宅医療を選択。そのため数日後より、自宅への訪問診療及び訪問看護を開始。食事を流動食+栄養剤に変更し、腫瘍からの発熱に対しては定期的な解熱鎮痛剤を粉薬で処方し緩和治療を開始。その後前胸部や背中の痛みも出現したため、貼り薬のモルヒネ製剤を開始。ご本人の痛みの訴えを聞きながら、定期的な自宅への訪問診療にて緩和治療を継続。次第に痛みの増強と呼吸苦の訴えも出現し、内服も困難であるため、モルヒネ製剤の持続皮下注射に切り替え経過観察。症状は緩和されるも、その後水分の摂取も困難となりました。点滴をすると胸水が貯まったり、痰が増えてご本人の苦しさを増すため、点滴は行わず経過観察。その数日後、ご自宅にてご主人に見守られながら、静かに息を引き取られました。

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