医療コラム

介護医療コラム(63)「訪問診療 症例その五十」

今回の仮想患者様xさんは85歳の男性の方で、脳梗塞後遺症や高血圧、慢性腎不全などで総合病院に通院中でした。1週間前から急に39度くらいの高熱が出るようになり、様子をみるも熱が下がらず、体がとてもだるくなってきたため、通院中の総合病院に再診。採血検査を受けたところ、白血球の値が異常高値になっており、赤血球と血小板の値が急激に低下していました。そのため精密検査目的に急遽入院となり、精密検査の結果、急性骨髄性白血病の診断となりました。xさんは85歳と高齢で、脳梗塞後遺症や慢性腎不全などの基礎疾患もあり、抗癌剤や骨髄移植のような積極的な治療は、ご本人もご家族も希望されませんでした。またxさんは、もし治療が難しい病気になった際には、辛い症状をとりながら、残された時間を自宅で過ごしたいという希望を、以前からご家族に話していたことからも、自宅での緩和治療を希望されました。そのため主治医より、当院に在宅緩和治療の依頼があり、数日後総合病院の入院病棟に訪問。在宅緩和治療及び急変時の対応などについて説明し、自宅療養に必要なものも手配し翌日自宅退院。その次の日から、自宅への訪問診療及び訪問看護を開始。発熱や倦怠感に対しては、ステロイドホルモンや解熱剤の定期内服を行い、貧血症状の辛い時などはモルヒネ製剤の屯用にて対応。その他胃潰瘍の予防のための胃薬や、便秘に対する下剤、不眠に対する睡眠薬などにて緩和治療を継続。その間xさんは、訪ねて来られる兄弟の方やお子さん、お孫さんとお酒を少し飲みなが ら、食事も共に楽しまれていました。しかし血小板の値が非常に低下していることから、血尿や下血が少量ずつ続き、徐々に貧血及び血圧の低下も進行していきました。そのため歩行も困難となり、介護ベッドでの生活となってしまいましたが、その後もご家族と色々なお話をされながら過ごされました。ご家族には、貧血と血圧の低下が日を追う毎に進行していること、非常に出血しやすい状態であることから、急変する可能性が非常に高い旨説明し、覚悟をされていました。その数日後、急に意識が無くなり痙攣しているとご家族より電話があり、急遽往診を実施。診察した結果、恐らく脳出血を起こしたのではないだろうかと家族に説明。しかしその時には、すでに意識が無く、血圧も触れず呼吸も弱くなっている状態であったため、そのまま家族と見守り、その数分後静かに息を引き取られました。

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