医療コラム

介護医療コラム(27)「訪問診療 症例その十五」

今回の仮想患者様Oさんは87歳男性の方で、脳梗塞後遺症と高血圧、糖尿病などに対し、身体に麻痺があり寝たきり状態で通院困難であるため、当院訪問診療にて内服加療を約5年前から継続していました。御自身でよくお話もされ、内服治療にて安定しておりました。しかし数ヶ月前から徐々に食事の量が減ってきて、水分もむせるようになったため、以前より水分を摂る量も減ってきていました。そのような状態で経過をみていたある日、御家族から突然本人の意識がもうろうとしているとのことで往診の依頼があり、急遽往診を実施。御自宅で診察したところ、血圧が160/90台で心拍数が100回台/分、SpO2という酸素の値は89%位とやや低下していました。呼びかけても返事はせず、目は開いているものの、空中の一点を見つめたままでしたが、呼吸はやや弱いながらもしていました。御家族と相談し、意識障害の原因を調べるため、まず採血検査を実施することとしました。 今回の症例の意識障害の原因として考えられるのは、①低血糖、②脳梗塞、③脳出血、④電解質異常などが挙げられます。まず①は、以前から糖尿病の内服治療をしており、糖尿病の薬の種類によっては、食事があまり摂れないのに内服すると低血糖を起こし、意識障害を起こすことがあります。この場合には、血糖値をはかって低ければブドウ糖の投与を行えば改善することが多いです。次に②は、最近水分の摂取量が減ってきていたため、脱水になると血液がドロドロになり、脳梗塞になる可能性があります。特に今回のように、意識障害が起こるくらいの脳梗塞であれば、広範囲な脳梗塞や、脳幹部という脳の大事な部位の脳梗塞などが考えられるため、命に係わる脳梗塞の可能性が高いです。脳梗塞の診断のためには、採血だけでは不十分で、CTやMRIが必要となります。③についても同様で、意識障害を起こすような脳出血であれば、広範囲な脳出血やクモ膜下出血、脳幹部出血などが考えられ、診断のためには採血だけでは不十分で、CTが必要となります。最後に④ですが、これは電解質のうちでも特にナトリウムという電解質が、極端に高くなったり低くなったりすると意識障害の原因となります。この症例では、食事や水分が摂れなくなってきていたため、食事からのナトリウム摂取が低下して低ナトリウムになるか、水分摂取不足で脱水となり高ナトリウムになっている可能性があります。採血検査にてそれを調べ、点滴などで対応することがあります。 意識障害の原因の中には、命に係わる重症な疾患も含まれているため、なるべく早い対応が必要といえます。

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