医療コラム

介護医療コラム(26)「訪問診療 症例その十四」

今回の仮想患者様Nさんは90歳男性の方で、高血圧と糖尿病、脂質異常症にて60代の頃から定期的に外来通院をされていました。85歳までは近くのクリニックにご自身で通院されていましたが、85歳を過ぎた頃から下肢の筋力が低下し、自宅での生活にも介助が必要となったため、グループホームに入所。入所後は通院が困難とのことで、前医より施設への訪問診療の依頼があり、引き続き当院訪問診療にて内服加療などを継続していました。約1年前の89歳時に、夜間トイレに行った際に転んで尻もちをつき、腰椎圧迫骨折を受傷。それをきっかけに腰痛がつらく歩くことが減り、下肢の筋力低下も進行し、車椅子かベッド上での生活となってしまいました。90歳になった最近、水分や食事の摂取量も低下し、やや老衰傾向か?と考えて経過をみていました。その矢先、急に意識がもうろうとなり、それまで落ち着いていた血圧も180/100まで上昇。右の上肢と下肢が動かないとのことで往診の依頼があり、急遽往診を実施。診察を行ったところ、脳梗塞の可能性が非常に高いと判断し、御家族と相談の上、市内脳神経外科に依頼し救急搬送。同院で検査をしたところ脳梗塞の診断となり、入院となりました。 この症例のように、動脈硬化を起こしやすい高血圧と糖尿病、脂質異常症を持病としてお持ちで、自分であまり歩かなくなったことや、水分の摂取量が減り脱水になることで血液の流れ が悪くなり、脳梗塞になってしまったと考えられます。高齢で脳梗塞になると、血栓を溶かすような強い脳梗塞の治療は合併症が起こるリスクが高いため難しく、脳梗塞の治療が終わった後もなかなかリハビリがうまく進みません。また今回の症例のように、右半身麻痺が認められるような脳梗塞では、利き手が不自由となるため、食事も介助が必要となることが多くみられます。また高齢の方では、脳梗塞後遺症として食事や水分の飲み込みが悪くなり、誤嚥性肺炎をその後繰り返すことも少なくありません。さらに飲み込む能力が年齢と共に低下していくと、最終的に食事や水分が飲み込めなくなり、老衰で看取らせて頂くケースも増えてきています。脳梗塞を予防するためには、日頃から軽い運動等を行い寝たきり状態となることを避け、脱水にならないように水分摂取を十分に行うことが必要と考えられます。

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