今回の仮想患者様Lさんは90歳男性の方で、これまで脳出血後遺症などのため、自宅で家族の介護を受けながら療養されていました。約1年前から寝たきり状態となり、ベッド上で寝返りも自分ではあまりできなくなってきていました。また最近食欲もあまりなく、食事量も以前に比べると減ってきているとのことでした。約2か月前からお尻の上あたりの仙骨部の皮膚が赤くなり、次第に皮膚がむけてきているとのことでした。そのため御家族が当院に相談のため来院。数日後から訪問診療を開始しました。訪問診療にて診察したところ、仙骨部の褥瘡と診断。まず訪問看護を導入し、定期的な褥瘡の処置及び御家族への処置の仕方の指導を依頼。また担当のケアマネージャーに、褥瘡を予防するマットレスのレンタルを依頼しました。 褥瘡の処置の仕方ですが、まず赤くなっている程度であれば、褥瘡予防マットを導入し様子をみたり、オプサイトというサランラップみたいなものを褥瘡部分に貼る様な処置で対応します。褥瘡部分がやや深く、浸出液が出てきたり、感染がついていることが予想されるような状態であれば、定期的な洗浄や外用剤などで処置を継続していきます。さらに筋肉や骨の近くまで達するような深い重症な褥瘡の場合には、繰り返し洗浄し、さらに外用剤も重症な褥瘡用のものにします。さらには壊死している部位を切除する場合もあります。在宅医療の場合、医師の指示の下、褥瘡の処置は訪問看護師さんが熱心にやってくれますので、いつも訪問看護師さんと相談しながら対応しております。しかし褥瘡を良くするためには、これらの処置だけでは十分でないこともあります。患者さんの栄養状態が良くなければ、褥瘡の治りも不十分なものになります。特にこの症例のように寝たきりで高齢の方の場合には、栄養状態を改善させるというのは困難なことがほとんどですが、十分食事が摂れない方の場合、必要時には栄養剤の処方などもすることがあります。 通院が可能な方は、皮膚科や形成外科の先生の方が専門で、上手に治療して頂けますので、そちらへの通院をお勧めします。通院が困難で在宅での処置でしか対応できない方は、御相談頂ければと思います。

