医療コラム

介護医療コラム(29)「訪問診療 症例その十七」

今回の仮想患者様Qさんは75歳男性の方で、元々の性格は温厚な方でした。約1年前から物を無くしたり、不適切な服装となったり、些細なことですぐ怒るようになるなど、認知症のような症状が出現。心配になった御家族が本人を連れて、認知症外来を行っている医療機関に受診し、アルツハイマー型認知症と診断されました。内服薬による治療が開始されるも、次第に外出先から家に戻れなくなったり、夜一人で外出しようとするなどの行動が出てくるようになりました。一人での外出は心配なので少し待つように家族が話すと、大声で怒り出したり、家族に手をあげようとする行動も見られるようになってきました。通院も拒否するようになり、暴言や暴力、徘徊も続き、困った御家族が当院に訪問診療による対応を希望され来院。数日後より当院訪問診療開始となりました。 今回の症例のように認知症のため、うまく自分の思いが伝えられずイライラしてしまう患者様には、イライラを少し和らげるような認知症の薬を開始します。その後徐々に内服薬の量を副作用が出ないか確認しながら増量していきます。同時にもし夜間あまり眠れていないようであれば、夜間せん妄を起こしにくい睡眠薬などを併用し、日中はしっかり起きて夜間は眠るような生活のリズムを作るように心がけます。それでもイライラや暴言、暴力が改善しない場合には、さらに気分を落ち着けて頂くような薬剤を併用していきます。今回の症例のように、通院を拒否してしまう患者様では、介護保険の申請などもできていないことがよくあるため、介護保険の申請も行います。介護保険が取得できたら、それを使ってデイサービスを利用することで、家族の日中の介護負担を軽減したり、入浴やレクレーションを通じて本人の気分もリフレッシュするように試みます。さらにもしご本人がデイサービスを受け入れてくれ、宿泊することも可能となれば、たまにショートステイという数日泊まりながらサービスを受けることも可能となり、さらにご家族の介護負担は軽減されます。 以上のようにお話はしましたが、このようにうまくいくことは正直多くはありません。しかし御家族だけで何とかしようとすると、介護に行き詰まり、家族が倒れてしまったり、逆に家族が認知症の患者様に暴言や暴力を振るってしまうことにもつながります。その為まずはご家族だけで抱え込まず、市内にある包括支援センターや各認知症相談窓口にご相談頂ければと思います。

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