これまで当院の訪問診療で、800人以上の方を看取らせて頂きました。その経験から、まず訪問診療を希望された患者さん本人とその家族に伺うのは、最期をどこで迎えたいかということです。自宅で療養されている方は、そのまま自宅を希望されたり、施設入所でという方もいたり、最期は入院でという希望の方もいらっしゃいます。また施設入所で療養されている方は、そのまま入居されている施設でという希望の方、最期は入院でという希望の方、さらには残された時間は自宅に戻って迎えたいという希望の方と様々です。何故このようなシビアな話をまずするのかというと、調子が悪くなる時は急にやってきます。その時にその話をすると、動揺しているほぼ全ての家族は何も覚悟ができていないため、本人の希望は聞かずに方針を先送りするため入院を希望されます。患者さん本人が元気で、本人の意志が確認できる時にお子さん達や配偶者の方と共に、本人がどこで最期を迎えたいかということを聞いておいた方が、本人の意志を尊重できます。またその意志を聞いておけば、いざという時、迷った時に本人の意志に従えば、残された家族はその選択に後悔が少ない傾向があります。本人の意志だったから、尊重してあげたから良かったよね、と言えますよね。一方なかなか難しいのが、認知症や知的障害などで本人の意志がわからない方です。認知症の方は本人の意志が確認できる時に事前に聞いていたら、その意志に従うことができます。しかし知的障害の方は生来であるため、家族がその判断を行わなければなりません。そのような場面を何度も経験しました。その際にお話しすることが多いのが、「住み慣れた施設あるいは自宅で最期を迎えていただく方が、本人は不安にならずに過ごせるのではないでしょうか。もし入院となると、知らない場所に連れて行くことになるので不安になるでしょうし、医療機関は入院となると何らかの治療を行う必要があるため、点滴の痛みや経鼻経管栄養の苦痛、治療をするためにじっとしていなければならない苦痛が伴います。また興奮状態となり他の入院患者さんに影響を及ぼしてしまう場合には、精神科病棟での治療となるため、本人の安全が確保できない場合には、自由が制限されるような環境での入院が必要となります。入院での治療の方が高度な医療を受けられ、延命や救命という点では優れていますが、もし本人に苦痛を伴うような延命や救命を希望されないのであれば、点滴などの延命治療は難しいですが、内服などの本人の苦痛を伴わない治療を行い、残念ながら亡くなった際には、住み慣れた場所で看取ることは可能です。」という説明です。この機会に家族間で話し合っておくのも良いかもしれません。

