医療コラム

介護医療コラム(16)「訪問診療 症例その五」

今回の仮想患者様Eさんは88歳女性の方で、脳梗塞による右半身麻痺があり、施設で介護士さんの介護を受けながら生活をされていました。日中は車椅子の生活で、自分で立つことはできず、最近ベッドで横になっていることが多くなってきました。一年程前までは介助を受けながらトイレで用を足していましたが、最近では徐々に認知症の進行も見られ、オムツでの対応が必要となってきました。食事も介助を受けながらとっていますが、最近飲みこむ力が落ちてきたせいか食事に時間がかかり、時折むせるようなことも見られるようになってきました。また食事を十分噛むことができなくなったせいか、便秘や下痢を繰り返すようになってきていました。このような状況のため通院も困難となり、一か月前にこれまで通院していた病院より当院に訪問診療の依頼があり、入所施設への訪問診療を開始。前の病院からの定期薬の処方を行いながら、定期的に診察をしながら経過観察をしていました。ある金曜日の夜に、入所している施設の職員から、急に38度の熱が出てEさんがぐったりしているとのことで往診の依頼があり、急遽往診を実施しました。 Eさんのような状況の方で、急に熱が出るような原因として多いものには、①誤嚥性肺炎、②風邪や胃腸炎、③尿路感染症が挙げられます。①は飲みこむ力が低下している方に多くみられ、食事や唾液の一部が気管に入り、それが原因で肺炎となる病気です。軽症では風邪とあまり症状は変わりないですが、重症の場合には咳や痰がらみ、発熱、呼吸困難などの症状が 出ます。①を疑う場合には聴診の他に、パルスオキシメーターという機械で、動脈血酸素飽和度という値を調べ、低下が認められれば①を疑います。次に施設に入所中の方であれば、施設で風邪や胃腸炎、インフルエンザが流行していないか、嘔吐や下痢をしていないかなどを聞き取り、上記②も疑います。また特にオムツの使用を必要としている高齢の女性の方に多いのが③です。③は繰り返すことが多く、尿が汚れていないか、血尿が出ていないかなどを聞き取ります。はっきり原因がわからない場合や、入院が必要なくらい重症な状況かの確認のためには、採血検査や尿検査なども行う場合があります。以上のような診察の結果を踏まえ、ある程度発熱の原因を見極めて、必要時には抗生剤や解熱剤などの投与にて治療を行います。 発熱は、高齢者で一番よく起こる症状の一つです。発熱だけでは軽症か重症かの判断をつけることが難しい場合が多々ありますので、特に施設などでは、パルスオキシメーターがあれば、重症度判定の一つの判断材料になるかもしれません。

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