今回の仮想患者様oさんは75歳の男性の方で、高血圧で通院していた医療機関で撮影した胸部レントゲン写真で、肺に多発する影があると指摘を受けました。そのため総合病院での精密検査を勧められ受診。全身の精密検査の結果、前立腺癌が見つかり、前立腺癌が肺に多発転移を起こしている状況でした。また腰の骨や肋骨にも数か所転移が認められました。そのため総合病院泌尿器科でホルモン療法が開始され、通院で治療を継続していました。その約3か月後、急に腰辺りに激痛が走り、総合病院に再診。腰の骨が潰れるように骨折していることがわかり、痛みが強くそのまま入院。入院後、放射線治療にて痛みの緩和を試みましたが十分痛みが取れず、コルセットなども装着しましたが歩けるまでに改善はできず、痛み止めの定期内服などで一度退院となりました。その後何度か総合病院泌尿器科への通院に行きましたが、痛みがある中で待つ時間が辛く、通院が困難となりました。そのため当院に在宅での内服治療の継続及び痛みのコントロールの依頼があり。数日後より自宅への訪問診療を開始。主に腰と肋骨付近の痛みに対し、一般的な痛み止めとモルヒネを組み合わせて痛みのコントロールを行いました。安静にしているとそれ程痛みはないものの、動くと痛みが強く出るため、ベッドで過ごす時間が長くなり、2か月後にはほぼ寝たきりの状態となりました。その後体のだるさも強くなり、食欲も低下していきました。体がどんどん痩せていくため、ご家族から点滴をしてみてはどうかという提案がありました。しかし肺に転移が多発しているため、栄養状態が悪い中で点滴を行うと痰が増えたり胸水が貯まり、本人の苦痛や苦しさを増やす可能性がある旨説明。本人も点滴の希望はなく、そのまま痛み止めの調整をしながら定期的に訪問診療を続けていきました。しかしその1か月後には食事もほとんどとれなくなり、飲み薬を飲むのも困難となったため、モルヒネの貼り薬と座薬、痛み止めの座薬で痛みのコントロールを継続。しかし十分な改善が得られないため、モルヒネの持続皮下注射を開始。その後やや症状改善見られるも、食事と水分はほとんどとれなくなりました。当初よりご本人もご家族も最期まで自宅で過ごしたいという希望であったため、そのまま経過観察。その約1週間後、ご家族に見守られながら、ご自宅で静かに息を引き取られました。