医療コラム

介護医療コラム(40)「訪問診療 症例その二十七」

今回の仮想患者様aさんは78歳の男性の方で、20歳代から1日20本くらいの喫煙と、毎晩飲酒をされていました。塩辛いものが好きで、高血圧などで定期的に近くの診療所に通院されていました。60歳代に受けた健診で、慢性胃炎があり、ピロリ菌に感染しているという結果でしたが、特に胃の不調もなかったため、精密検査やピロリ菌の除菌治療は行っていませんでした。約2か月前から食事をしてもすぐ満腹になるような感じがして、食事量が減ってきていました。そのためか体重が2か月で7㎏程減っていましたが、お腹の痛みなどもなく、食事量が減っているから体重が減っているのだろうと様子を見ていました。 ところがいつも通院中の診療所の医師から、定期的に行っている採血検査で、これまで認められなかった軽度の貧血が認められるようになったこと、最近体重が減ってきていることから、念のため胃カメラを受けるように説明を受け、当院に紹介となりました。当院で胃カメラを実施したところ、胃に進行胃癌が見つかり、総合病院での精密検査をお勧めし紹介。全身のCT検査なども受けた結果、進行胃癌による肝臓と肺への転移も見つかり、総合病院の医師から抗癌剤での治療を勧められました。その後約6か月間抗癌剤治療を受けるも、抗癌剤で胃癌の進行が抑えられず、体力的にも抗癌剤治療の継続が厳しくなったため、ご本人は残された時間を自宅で過ごすことを希望され、在宅での緩和治療を希望。そのため当院に在宅緩和治療の依頼があり、数日後より御自宅への訪問診療を開始しました。腹部や背部に痛みがあるとのことで、副作用の少ない痛み止めから開始し、胃の不快感などに対しても胃薬などを処方。食事が摂れる量は少ないものの、点滴を行うとお腹や肺に水が溜まり、お腹が苦しくなったり痰が増えて呼吸が苦しくなる可能性がある旨説明し、口から摂れる水分や食事などで経過観察。その後も定期的に訪問診療を実施し、痛みが強くなってきたため医療用麻薬であるモルヒネを使用したり、だるさに対してはステロイドという内服薬を使用し、御本人の症状緩和を継続していきました。その間ご本人は、御自宅で趣味の盆栽などを楽しまれ、奥様の介護を受けながら、定期的にお見舞いに来られるお子さんやお孫さんと時間を過ごされていました。しかし約3か月後には食事摂取などが困難となり、御家族に見守られながら御自宅で最期を迎えられました。

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