今回の患者様⑪さんは70歳男性の方で、他院で肝臓癌とその肺転移に対し抗癌剤治療を約3か月受けてきました。しかし抗癌剤の効果が乏しく、癌の進行と共に通院も困難となり、これ以上の抗癌剤治療は困難という判断となりました。そのため主治医より当院での在宅緩和治療を勧められ、紹介状をお持ちになりご家族が当院に受診。ご家族もご本人も当院の訪問診療で、痛みなどの苦痛症状に対し緩和治療を希望され、最期は自宅で迎えたいとのことでした。そのため数日後よりご自宅への訪問診療を開始。ご自宅はアパートの一室で、主に奥さんが介護をされていました。訪問診療開始時には特に痛みはないものの、下肢のむくみや腹水を認めたため、利尿剤などでそれらの症状を緩和。また倦怠感などに対しステロイドホルモンの投与などを行いながら、自宅での療養を訪問看護と共にサポートしていきました。その後徐々に肝臓付近の痛みも出てきたため、モルヒネ製剤も開始し、大きな苦痛なく奥さんの介護を受けながら自宅療養を継続できていました。癌の進行と共に食事の摂取量も低下し、あと数週間くらいが限界だろうという状況を奥様にお話ししたところ、遠方のお子さん達も戻られ、色々お話もされながら残された時間を過ごされていました。その後残された時間もあと1週間くらいという病状となった際に、突然奥様から急いで相談したいことがある ので来てほしいと言われ、急遽ご自宅に訪問。奥様からアパートの賃貸会社から賃貸物件であるため、自宅で看取りを行うと事故物件の扱いになる恐れがあるため、ご自宅での看取りは認められないというお話でした。そのためやむを得ず、自宅での看取りは断念。ご本人にも事情をご説明し、依頼があった前医の医師に相談。その医師が入院での対応をとってくれることとなり、翌日救急車で同院へ搬送。同日入院となり、その後約1週間ご家族が入院先で付き添われ、入院先の病院でお亡くなりになったとのことでした。


