医療コラム

介護医療コラム(74)「訪問診療継続困難ケース⑨」

今回の患者様⑨さんは97歳女性の方で、脳梗塞後遺症のため90歳の時から寝たきり状態となり、その頃から訪問診療及び訪問看護にて、自宅療養をサポートしていました。ご自宅では同居している娘さん夫婦が、訪問介護やデイサービス、ショートステイなども利用しながら、毎日懸命に介護をされていました。訪問診療開始前のご家族との面談では、食事が摂れなくなった場合には点滴などは行わず、自然の経過でみていき、最期は自宅での看取りを希望されていました。また肺炎や心疾患などで急に状態が悪くなった際にも、本人の苦痛をとるような対症療法を行いながら、最終的には自宅での看取りを希望するということでした。訪問診療と訪問看護開始後約5年は、たまに風邪をひいたり膀胱炎になるなどの軽度な体調変化程度で、内服薬での治療ですぐ改善していました。しかし約2年前から、食事や水分の飲み込むまでの時間が長くかかるようになり、むせることや痰が絡むことも増えてきていました。発熱も数か月に1回程度みられるようになり、その都度抗生物質や解熱剤などの内服治療にて対応していました。ご家族には状況的に、水分や食べ物の一部などがうまく飲み込めなくなることで気管に入ってしまい、肺炎を起こす誤嚥性肺炎を繰り返している可能性が高いと説明。また誤嚥性肺炎を繰り返すと、最終的には抗生物質が効きにくい菌が残って増殖するため、抗生物質での治療の効果がなくなっていき、誤嚥性肺炎で命を落とすことになる旨を説明。その後もご家族と話し合い、誤嚥性肺炎を少しでも予防するよう、水分や食事にとろみをつけて飲み込みやすくするようにしたり、口腔ケアを行う回数を増やし、口腔内の清潔をなるべく保つように心がけました。また誤嚥性肺炎による急変時にも自宅でできる範囲での治療にて対応し、改善がない場合にはご自宅で看取る方針としました。ある日の夜間、夕食をいつもより多くむせた後から高熱が出現し、呼吸を苦しがっているとのことで往診の依頼があり、急遽往診を実施。診察上、それまでにはみられなかった酸素の低下も認められ、ご家族に重症な誤嚥性肺炎を起こしていると説明。数時間後に亡くなる可能性もあると話したところ、自宅で看取るつもりであったが、まだ会わせたい家族がいること、苦しんでいる本人をみていられないなどの理由で、入院での対応を急遽ご家族が希望。自宅で本人の苦痛をとるような対応を行うことなども説明するも、やはり入院での対応を希望されたため、入院先の病院へ入院の依頼を行い救急搬送。その後入院先の病院で点滴の治療などを行うも、約1週間後に亡くなられたとのことでした。

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