医療コラム

介護医療コラム(60)「訪問診療 症例その四十七」

今回の仮想患者様uさんは70歳の男性の方で、3か月くらい前から足の裏に違和感が出現。その部分を見てみると、2㎝程のまだらな黒い皮膚のかさぶたのようなものを認めました。血豆のようなものかと思い、そのまま数か月間様子を見ていました。しかしその部分は小さくはならず、徐々に大きくなってきて、出血もするようになりました。そのためある日、近所の皮膚科に受診。皮膚科にて皮膚の悪性腫瘍の疑いがあるとのことで、総合病院の皮膚科に紹介されました。総合病院の皮膚科にて精密検査の結果、足の悪性黒色腫(メラノーマ)の診断となりました。さらにその腫瘍はすでに両側の肺に多発転移をしている状態で、治療方針として手術ではなく、免疫チェックポイント阻害剤による治療が選択され、治療を開始。約2か月間治療を行いながら経過観察をしていたところ、免疫チェックポイント阻害剤の副作用の一つである間質性肺炎が出現。そのため同剤での治療を中止し、間質性肺炎の治療を実施。幸い間質性肺炎は落ち着いたものの、これ以上の同剤の投与はリスクが高いと判断され、主治医に緩和治療を勧められました。ご本人はご家族と相談し、残された時間を自宅で家族と好きなことをしながら過ごしたいという希望であったため、主治医より当院の在宅緩和治療を受けてみてはという提案があり、当院に紹介受診。その後自宅への訪問診療と訪問看護を開始し、下肢の痛みと呼吸の苦しさに対し、痛み止めとモルヒネ製剤にて 症状緩和を目指しました。同時に、足の腫瘍部分からの少量の出血が続いていたため、定期的な訪問看護によるガーゼ処置などで対応。その後約1か月間は比較的安定した状態で療養されていましたが、徐々に足の腫瘍部分からの出血量が増えてきたことによる貧血症状と、肺の多発転移巣の進行による呼吸苦の悪化に伴い、ほぼ寝たきり状態となってしまいました。全身状態の悪化と症状の緩和治療が困難となってきたこと、奥さんの介護が体力的に困難となったため、ご本人とご家族とも相談し、緩和ケア専門医に入院での緩和ケア治療継続の依頼を行い、数日後緩和ケア病棟へ入院。入院後、酸素投与や症状緩和のための必要最低限の点滴、モルヒネの持続皮下注射などを行い、苦痛症状は緩和されました。しかし病状の悪化と共に、更に全身状態が悪化し、入院して約2週間後、付き添いをしていたご家族に見守られながら、静かに息を引き取られたとのことでした。

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