前回のコラムが便秘だったので、今回は下痢についてお話したいと思います。便秘と同様に、生まれた時からずっと便が柔らかいという方、お腹を冷やして何度か下痢をしただけという方は病的な下痢ではありません。それまで全く症状がなかったのに、急に下痢が続くという場合は、以下のような病気を考える必要があると思います。 ①感染性腸炎〜これがまず下痢の原因で圧倒的に多い疾患です。ウイルス性や細菌性、真菌性などがあります。乳幼児ではほとんどの場合ウイルス性で、大人ではウイルス性や 食中毒に代表される細菌性が多いです。さらに高齢者や免疫力が低下している方では、カビが感染する真菌性も認められます。ちなみに最近騒がれているO−157は出血性大腸菌ですので、細菌性腸炎に分類されます。また万一、東南アジアやアフリカから帰国直後に下痢がはじまったという場合には、コレラやチフス、赤痢などのことがありますので、すぐ医療機関に受診しましょう。 ②腫瘍〜胃や腸に腫瘍ができると便秘になるイメージがありますが、下痢になることもあります。最近体重が減って下痢が続くという場合には、念のため内視鏡検査をお勧めします。 ③炎症性腸疾患〜この代表的な疾患としては、潰瘍性大腸炎とクローン病が挙げられます。いずれの疾患もまだ原因が解明されていないですが、腸の粘膜に炎症を起こすことで難治性の下痢や下血を伴う疾患です。比較的若年層で発症し、頻度は潰瘍性大腸炎で1200人に1人、クローン病で4300人に1人と比較的稀な疾患です。この病気かを診断するためには、内視鏡での検査が必要となります。 ④内分泌疾患〜代表的なものに甲状腺機能亢進症が挙げられます。これは、首の前面にある甲状腺という臓器からでている甲状腺ホルモンが、何らかの原因で分泌量が増えることで動悸や体重減少、発汗、下痢などの症状がでます。この病気の有無は、採血検査でわかります。 ⑤過敏性腸症候群〜これは自律神経の調整がうまくいかないことにより、腹痛や下痢が続くという病気です。他の下痢をする疾患をすべて否定し、ストレスが多い時に下痢をするようであれば、この疾患が強く疑われます(詳しくは2011年11月のコラム参照)。 下痢が長く続くと心配なのが、電解質異常と脱水です(詳しくは2010年11月のコラム参照)。もし下痢が長く続く場合には、採血検査や内視鏡検査などを受け、適切な治療を受けましょう。

